悲喜こもごもの熱闘ドラマで日本中を熱くした北京五輪も、あす限りだ。感動シーンはいつまでも人々の心に深く刻まれることだろう。
メダルを獲得した日本選手とその家族のきずなの強さを思い起こさせる場面も多々あった。柔道男子66キロ級で二連覇を決めた内柴正人選手がその典型例だ。
「家族のために戦う」と自らを鼓舞し続け、妻子が見守る中で「強い父」を証明してみせた。「これが僕の仕事なので」。栄冠を勝ち取った後、観客席を見回し、何度も子どもの名前を叫ぶ姿は印象的だった。
アテネ後の不振を乗り越え、柔道女子70キロ級で二連覇を遂げたのは上野雅恵選手。五輪代表から漏れた妹の無念さを背負い「妹と一緒に戦う」と臨んでつかんだ栄冠だった。「ずっと私を見ていてくれて心強かった」。妹への感謝を口にした。
フェンシング界で日本初の銀メダルに輝いた太田雄貴選手は、父と二人三脚で歩んできた夢が結実した。「父は厳しかったが、今では感謝している」。亡父への思いを胸に、シンクロナイズドスイミングのデュエットで銅メダルを手にした原田早穂選手も「父の支えがあったから続けてこられた」。
家族の精神的な支えをバネに夢につなげたエピソードが心に染みる。多くの日本人の心に潤いをもたらせたに違いない。