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【スポーツ】

中国にメダル『日本の力証明』 シンクロ

2008年8月24日 07時09分

中国選手から銅メダルをかけられ笑顔の井村コーチ(中)=国家水泳センターで(川北真三撮影)

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 二十三日のシンクロナイズドスイミング・チームで中国に初のメダルをもたらした井村雅代ヘッドコーチ(58)。就任以降、日本からの批判と、中国での重圧とのはざまを泳ぐような日々だったが、「日中双方のため指導してきた。何も恥じることはない」と胸を張る。 (北京・平岩勇司)

 平均一七一センチの長身と欧米並みの脚線美を生かした演技を終え、八人の選手が次々と井村コーチに抱きつく。「謝謝!(ありがとう)」。悲願のメダルに涙目の選手たち。対照的に井村コーチは満面の笑み。「私は泣かない。だって、メダルは驚きではなく、目標だったから」

 日本代表コーチ時代、六大会連続で五輪のメダルをもたらした「日本シンクロの母」。勇退後の一昨年末、一転して中国の要請でコーチに就任する。

 「日本のシンクロが評価されるにはコーチが海外に出て、認めさせんとあかん。“営業”に行かんと」。以前からの自説を実践した。だが、日本では「裏切り行為」と反発された。中国でも「日本のために手を抜くのでは」と疑われた。

 雑音を払うように指導に打ち込んだ。選手には「一日十時間以上、練習するから、びっくりしたらあかん」。体力向上のため「普通の女性の三倍食べなさい」と、日本時代と同じ増量指令を出した。

 「日本に勝ちたいと思いますか」。日中の記者から数えきれないほど同じ質問を浴びた。この日も「日本に勝って複雑か」と問われると、「メダルを取ったのは、日本のコーチの力だと思っている。日本のシンクロはすごいということなんです」と力を込めた。

 「井村コーチは本当に厳しかったが、技術、速度、パワーのすべてで成長できた」。チームリーダーの張暁歓選手(28)は銅メダルを首にかけて振り返る。「十六日はコーチの誕生日だったけど、試合前で何もできなかった。メダルが彼女へのプレゼントです」。国境を越えて指導を受けた師匠に、心から感謝していた。

(東京新聞)

 

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