「消費者がやかましい」と発言した太田農水相に対し、自民党の麻生太郎幹事長が「関西以西の人はみんな言う。うるせーという意味じゃない。よく知っているという意味だ」と擁護した。二人とも福岡県選出の衆院議員。本当にそういう意味なのか、方言の専門家に聞いてみると――。
「九州方言研究会」を主宰する福岡教育大の杉村孝夫教授(方言学)によると、確かに「やかましい」には方言で「詳しい」という意味があるという。「日本方言大辞典」(小学館)には、長崎市で使われる「やかましい」の意味として「難しい、複雑だ」に加えて、「好事趣味などに凝っていて詳しい」と記されている。
しかし、杉村さんは、太田氏の発言の文脈を考えると、「詳しい」という意味には受け取りにくいという。「例えば『漫画にやかましい』なら、詳しいという意味に取れなくもないが、『国民が』の後に続けば、口うるさいと取るでしょう」
また、杉村さんは「詳しいという意味の『やかましい』はくだけた表現」と説明。「かしこまった公的な場で使う表現ではない」と述べた。
国立国語研究所に尋ねてみると、肯定的な意味の「やかましい」は西日本だけではないという。「日本国語大辞典」(小学館)では、新潟県の佐渡島に「名高い。評判である」の意味があり、ほめことばとなっていると紹介されている。
ただ、同研究所の研究員は「『詳しい』という意味の方言も、元々『騒がしい。煩わしい』などという意味から転じて用いられたもの」と指摘。「『国民がやかましい』と言った場合、国民に対して尊敬の念というより、用心しなければいけないというニュアンスが含まれていると理解するのが一般的。ほめことばとは取れない」という。
元福岡地検副検事の松崎真治さんは、博多弁とシャレの利いたオチで知られるお笑い芸「博多にわか」を愛して70年。「福岡での普段の会話では、物事に詳しいことを『やかましい』とは言いません。博多弁が間違った意味で広まったら迷惑」と話したうえで「農水相の発言が非難ば受け、ひどい目に遭おた(太田)て嘆きよるけん、弁護しござったが、考え方の浅う(麻生)はござっせんな」と「にわか」調で批判した。(江崎憲一、田中久稔)