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閉鎖的終末SS 夢の器最終回
四人の山百合会員が餓死を試みたため倒れたのは、彼女たちが薔薇の館へ戻ってきてから七日目だった。四人以外の山百合会員は、すでに彼女たちの傍で倒れて死んでいた。
まず腕に傷をしていた一人が、死者そのままのような皮膚色になって、ふわっと、横ざまに倒れて息をひきとった(島津由乃)。絶食絶飲して、息がたえても、もはや体内から流れだす汚物もなく、皮膚の表面に浮いていた静脈が、血液の凝固とともに色を失った。続いてもう一人の山百合会員がことっと背後の板壁に背をもたせ、ミイラのようにそのままの姿勢で死んだ(二条乃梨子)。もだえもなく、死の直前の荒い呼吸音もなく、また倒れもしなかった故にリリアン女学生は彼女がすでに息をしていないと気づいたのは、他の二人も死んで後のことだった。
三人目に、指導者らしいツインテールの学生が、死んだ(福沢祐巳)。死ぬ間際に、彼女は、顎を震わせて何かを言おうとした。年長らしい女会員がそっと、やさしく、あらゆる隔たりを越えた、聖なる優しさで彼女の肩を抱き、耳をその口元に寄せて、二、三度しずかにうなずいた。その女性は絶食に対して抵抗力があるのだろうか。頬の肉はおち眼窩はくぼみながらも、彼女の皮膚は幼女のように清潔であり、何か乳の匂いのようなかすかな高貴な芳香をすら発していた。指導者の口が魚の呼吸のように開閉し、そしてがっくりと首を前に折ったとき、その長い黒髪の女の口から、涙のように血がしたたり、そして噛み切られた舌の先が、ぽろりと膝の上に転がった(小笠原祥子)。何のつながりがあってか、どうした恩顧があってか、その女の死は、餓死ではない。あきらかにその先達のあとを追う殉死だった。時代を遡った福沢祐巳の純潔が山百合会を革新の道へと歩ませたが、結果として、彼女たちの生命は強固な絆とともに結ばれたまま、小笠原祥子の死によってその活動に終わりを告げた。 ――逆行の悲劇と激情、福沢祐巳の見た夢。