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【社会】

名ばかりデモ容認まざまざ 申請前に自宅軟禁

2008年8月23日 夕刊

20日、外出しようとしたところを男性らに制止される胡光さん(中)。男性は当局との連絡用のトランシーバーを持っている=中国北京市朝陽区で

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 北京五輪期間中、指定された三つの公園での集会・デモ活動を認めている北京市当局が、デモ申請前に市民を自宅軟禁したり、陳情者を市内から閉め出している。表向きは政治活動を認めながら、「国家の名誉」というメンツのために人権を無視した抑圧が続いている。 (北京・新貝憲弘、写真も)

 北京市朝陽区に住む胡光さん(52)は五輪開幕前日の七日夜、警官三人の訪問を受け「デモを申請しても受理しない。国家の名誉のためだ」と警告された。胡さんは五輪開催に伴う再開発の立ち退きで失った自宅の補償を求め、デモを申請しようとしていた。

 その日から常時数人の若い男性が胡さん宅を監視。買い物に出かけようとしても「許可が出るまで外出できない」と制止され、「外出が許されたころには商店が閉店して食事ができなかった日もある」(胡さん)。胡さんの近所では十数人が同様の状況に置かれているという。

 ニューヨークに本部を置く人権団体「中国人権」によると、デモ申請を五度行った北京市の呉殿元さん(79)と王秀英さん(77)は、市当局から一年間の労働教育処分を受けた。二人はかつて強制立ち退き問題で陳情したことが「公共場所の秩序を乱した」という理由で処分を受け、申請資格がないとされた。

 地方で解決されないトラブルを中央政府に訴えに上京した陳情者も、五輪開催に伴い“消えた”。数千人規模の陳情者が簡易宿舎群に寝泊まりし「陳情村」と呼ばれた北京南駅周辺は、「首都治安志願者(ボランティア)」と書かれた赤い腕章をつけた住民や警官ばかり。陳情者が現れるとすぐに通報する仕組みだ。辛うじて残る女性陳情者は「大半は公安当局に連れ去られた」と声をひそめた。

 

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