博多人形づくりに取り組んでいる福岡市中央区高砂の主婦木佐貫倶子さん(55)が「第55回日本伝統工芸展」に初出品した人形「祭りの夜」が入選した。大分・姫島のキツネ踊りを愛らしく素朴に仕上げた作品。木佐貫さんは「来年の出品の予行演習と思って出しました。びっくりしています」と喜んでいる。
同展は人間国宝などプロの作家たちも技を競い合う展覧会で、博多人形界にとっては、博多人形師体験講座からの期待の星の誕生だ。
木佐貫さんは、50歳のとき体験講座に応募、2年間学んだ。「何か、ものづくりをやってみたい」と年齢制限ぎりぎりで駆け込んだ。家族から「今しか、やれるときはない」と勧められ決断したという。その後は、博多人形師、川崎修一さん(59)の山笠人形作りの手伝いなどをしながら腕を磨いていた。
「祭りの夜」はJR博多駅前のイベントでキツネ踊りを見て感動。「子どもたちの愛らしさとともに祭りの不思議さを出せたら」と取り組み、制作した。高さ約20センチで子どもとキツネの子どもが対になっている。「絵の具を塗った筆跡が出ないようにするのが難しかった」という。
川崎さんは「集中力があり、持ち味である丁寧な仕事が生きた。人形師体験講座には劇団主宰者もきていたし、博多人形の世界がにぎやかになってうれしい」と話した。
◇ ◇
同展は9月23日‐10月5日、東京・日本橋三越で開催。来年2月、福岡市に巡回の予定。
第55回日本伝統工芸展入選者(県内分)は次の通り。 (敬称略)
【陶芸】大村逍山(北九州市)、亀井楽山、亀井又生庵(福岡市)、宮原隆次、吉田浩通(直方市)、下平清治(宗像市)、安川慶(古賀市)、添田和信(福津市)、丸田巧(うきは市)、熊谷光甫、石原祥嗣(宮若市)、徳沢守俊(須恵町)、松尾まさこ(粕屋町)、太田秀隆、福島善三、熊谷智久(東峰村)、熊谷保興、渡久兵衛(福智町)
【染織】築城則子(北九州市)、小川規三郎(福岡市)、松枝哲哉(久留米市)、松田えり子(田川市)、釜我敏子、藤岡敏恵(春日市)、山村省二、小川内龍夫、山村健(広川町)【漆芸】広田洋子(豊前市)【木竹工】河野行宏(直方市)【人形】木佐貫倶子、中村信喬、宗田智幸、小島康彦(福岡市)、白水英章(那珂川町)、矢野陽子(筑前町)【諸工芸】小西勝代(福岡市)
=2008/08/23付 西日本新聞朝刊=