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多様なルートと2つの官庁―特集・看護基礎教育(1)

 今年7月末、厚生労働省の「看護基礎教育のあり方に関する懇談会」が、「論点整理」をまとめた。この中で、看護基礎教育の今後については三論併記となった。日本看護協会などはこれを、「全体として4年制大学化の方向が示されている」ととらえ、看護基礎教育を「大学教育に一本化」すべく、取り組みを強めている。しかし、現実問題として近い将来に大学一本化が実現するとは考えにくい。この問題は、果たしてどのような道筋で、どこに向かっていくのだろうか。連載でお送りする。(吉澤 理)

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●看護協会は論点整理を評価

 「看護基礎教育は4年制の大学にしていく、という方向性をきちっと明示していく必要があると思う。これまでの議論の中でも、5人の委員はどのぐらいの期間をかけるかなどにニュアンスの違いはあるが、将来的には大学にしていこうという部分では一致しているのではないか。それをはっきり言わず、単に『充実を図るべきだ』では終われないのではないか」
 今年6月16日に開かれた「看護基礎教育のあり方に関する懇談会」の第8回会合。事務局から示された論点整理骨子案に対し、朝日新聞論説委員の梶本章委員が、強い口調で反論した。看護師の基礎教育は4年制大学化に向かうべきだと明記する必要がある、と訴えたのだ。

 ところが、7月7日に公表された論点整理案では、そうはならなかった。専門的な知識・技術はもとより、生活や予防、連携などの視点からも高度な資質・能力が求められるとした上で、4年制大学化について3つの考え方が併記されたのだ。
整理すれば、▽将来的には大学での基礎教育に移行すべき▽将来的には大学教育を主体にすべきだが、養成数などの状況を勘案して対応すべき▽大学教育での養成の必要性は認めるが、一律に限定するのではなく、現行の多様な養成過程についても評価すべき―というもの。
 日本看護協会は、論点整理案が示された翌日の7月8日、見解を発表。「全体として4年制大学化の方向性が示されている」との見方を示し、評価する一方、教員の確保や教育環境整備などの必要性を訴えた。しかし、確かに「4年制大学化の方向」は示されたと言えようが、指し示す力は随分と弱いようにも思える。

●看護師になるための多様なルート

 こうした議論の背景にあるのは、複雑な看護基礎教育の仕組みだ。
 昨年4月の看護師養成数は、1034機関で1学年の定員が計5万5114人。このうち最も多いのが、高校を卒業してから入る3年課程の養成所で、2万3400人余りと、全体の42.5%を占める。もう一つ、近年増えているのが、4年制の看護系大学で、1万2300人余りとなっている。
そしてもう一つ、2年課程の養成所が1万2700人余りと、看護系大学よりわずかだが養成数が多い。高卒の准看護師、または准看護師免許を持って3年以上業務に従事している人が対象の養成課程だ。
 しかも、養成ルートはこの3つだけではない。短期大学(2年課程、3年課程)や、5年制の高等学校専攻科もある。例えば最終学歴を見れば、同じ「看護師免許」であっても、中学卒、高校卒、短大卒、専門学校卒、大学卒のいずれもあり得る。


●厚労省と文科省

 さらに、所管省庁の違いが、問題を複雑にしている。
 看護基礎教育は厚生労働省が所管していると思われがちだが、実は、文部科学省が所管する部分もある。2年制、3年制の養成所は厚労省の医政局看護課だが、大学、短大の看護教育に関する部分は文科省高等教育局医学教育課になる。高校専攻科については、同じ文科省でも初等中等教育局だ。また、大学の場合、開設は大学振興課、私立なら経営的な問題は私学部にもかかわる。大学の付属の看護学校は、専門学校でも文科省の所管になる。
 結局、「看護基礎教育」を全体的に見ている役所はどこなのか、が全く分からないのが現状なのだ。


更新:2008/08/21 21:08   キャリアブレイン


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