幸徳秋水「死刑の前」
大逆事件によって検挙された幸徳秋水は、獄中で『基督(キリスト)抹殺論』を執筆する一方、『死刑の前』と題する手記を書きとめていた。これは「死生」「運命」「道徳―罪悪 意志自由の問題」「半生の回顧」「獄中の生活」の5章からなる予定だったが、1911年(明治44)1月24日の死刑執行によって中絶を余儀なくされた。ここでは、唯一のこされた第1章「死生」の一部を掲載する。文中にある「老いたる母」は、10年11月27日に上京して幸徳との面会をはたし、翌月28日、郷里の高知県中村町(現、四万十市)で病没した。