ディーゼル車から排出される黒煙などに含まれ、空気中を漂う直径2・5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下の微小粒子状物質(PM2・5)の濃度が上がると、周辺に住む高齢者が呼吸器系疾患で死亡する率が1・1%上昇していたことが24日、環境省の研究班が実施した国内初の大規模疫学調査で明らかになった。濃度の上昇で、子供の呼吸機能が低下したことも判明した。調査結果は24日午前、環境省の専門家会合で報告された。
同省はこれを受け、海外の文献調査や規制の動向なども参考に、PM2・5に関する環境基準の設定に向けて作業を本格化させる。ただ基準設定は早くても来年度以降になる見通しだ。
調査は02~04年度、PM2・5濃度を測定している札幌市、東京都区内、兵庫県尼崎市など都市部と、宮城県涌谷町などの地方都市を含む全国20地域で、人口動態調査を基に濃度と65歳以上の住民の死亡率▽ぜんそくなど呼吸器症状▽心臓など循環器症状--の関係について調べた。
PM2・5の濃度が1立方メートル当たり10マイクログラム上昇した場合、ぜんそくや肺炎など呼吸器系疾患による65歳以上の人の5日以内の死亡率を上昇前と比べたところ、1・1%高かった。また、PM2・5の濃度が上がった数時間後に、子供の呼吸機能の低下が明確になった。さらに大気中から抽出したPM2・5を濃縮し、ラットやマウスに投与する実験では、肺の炎症を悪化させることが分かった。一方、循環器系疾患による死亡率や3歳児を対象にしたぜんそくなどとの関連は確認できなかった。
欧米では、同様の疫学調査が実施されており、呼吸器系だけでなく循環器系の疾患とPM2・5の関連を示唆する結果も出ている。
今回の結果について、疫学調査を担当した国立環境研究所の新田裕史・環境疫学研究室長は「国内の健康影響の実態を反映させた初めての疫学調査で、重要な意味を持つ」と話している。【江口一】
毎日新聞 2007年7月24日 東京夕刊