現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

民主党代表選―決戦への備えは整うか

 民主党代表選が迫るなか、小沢代表の無投票3選が確定的になった。対立候補と目された議員が次々と不出馬を表明し、名乗りをあげようとした野田佳彦広報委員長も、自らのグループ内の反対論に押し切られ断念した。

 解散・総選挙の足音が刻々と近づいている。いまは党が結束すべきで、しこりを生みかねない代表選は得策ではない――。それが現時点で党内の大方の考えということのようだ。

 確かに、昨年の参院選を与野党逆転に導いた実績を思えば、小沢代表の再選こそが政権獲得への近道という判断は間違ってはいないかもしれない。

 だが、2年に1度の代表選は、国民が注視するなかで党の進路について議論を戦わす絶好のチャンスだ。本来なら総選挙へ向け、民主党政権ならこうするという政治と社会の青写真を描き出し、国民の信頼と期待を勝ち取る舞台にしなければならないはずだ。

 残念ながら、今回はそうした場は失われそうである。ならば、続投する小沢代表に求めたいことがある。総選挙に向けたマニフェストづくりで、代表選に匹敵するような、オープンで活発な党内論議に取り組むことだ。

 民主党の政策には、不十分な点や生煮えの部分が少なくない。

 たとえば参院選では、農家の戸別所得補償などの政策を掲げ、それに必要になる15.3兆円の財源を「行政のムダ排除」で生み出すとした。与党だけでなく、党内でも前原誠司前代表から不可能だとの指摘がある。

 安全保障をめぐっては、国連のお墨付きがあれば、武力行使を含む活動でも自衛隊の参加は憲法に抵触しない、というのが小沢氏の原則論だ。政府の従来の憲法解釈を一変させるものだが、これにも党内外の批判がある。

 「小沢氏に逆らえば干される」。党内でそんな言葉がいまだにささやかれる現実が、民主党への国民の信頼がいまひとつ広がらない原因ではないのか。前原氏はもちろん、野田氏や、代表選出馬への強い待望論があった岡田克也元代表らが、先頭に立って議論を盛り上げてもらいたい。

 秋の臨時国会では対決一辺倒の小沢路線がさらに強まりそうだが、それだけでは物足りない。国会での論戦で、民主党の政治こそ国民を安心させられるという姿を見せてほしい。

 もうひとつ、民主党に真剣に検討してもらいたいのは、そもそも代表の任期を2年と区切っていることが妥当かどうかということである。

 二大政党時代の政権選択は基本的に総選挙で争われる。任期は次の総選挙までとし、勝てば首相になり、負ければ退く、というルールに変えてはどうか。そうすれば、政権獲得という目標が一層はっきりし、そのための態勢づくりにじっくり取り組めるはずだ。

NHK―公正さが疑われては

 NHKの子会社が、政府機関や業界団体からシンポジウムなどのイベントを請け負って運営し、それを収録した番組を作る。できあがった番組はNHKで放送される。

 こうした流れで、多くの催しがテレビ放送されていることがわかった。

 子会社が公共放送の番組作りと一体化して仕事を取っているわけだ。多くの番組には、イベントの主催者を明らかにする字幕やナレーションは入っておらず、子会社が運営をしていることも示されていない。

 これでは、事実上スポンサーつきの広報番組なのに、それを隠して放送している、という批判が出てきても仕方があるまい。

 これに対し、NHKは次のような理由を挙げ、問題はないとしている。

 イベントの受注は子会社の正当な事業だ。放送することを前提に営業しているわけではない。放送した催しは公共性が高く、官公庁や企業の広報番組ではない。視聴者に考える材料を提供するのが狙いだから、主催者や運営者を伝える必要はない。

 この説明に説得力があるだろうか。

 シンポジウムなどの主催者にとって、全国に届くNHK放送は最も魅力的な媒体の一つだ。子会社に払う契約金には放送への期待が込められているのではないか。実際、子会社の一つ、NHK情報ネットワークの実績一覧では、05〜07年の12件はすべて教育テレビかBSで放送されている。

 もっと大きな問題は、イベントの主催者の狙いが、そのまま番組作りに反映されかねない危うさだ。

 言うまでもなく、NHKは不偏不党の立場で、特定の利益に左右されずに番組を制作・編成しなければならない。ところが、子会社は発注者の意をくんでイベントを運営し、それが番組になる。この二つの立場は初めから矛盾をはらんでいるのだ。

 発注する側は、イベントを「広報」と位置づけているケースも多い。子会社が作る番組は、結果としてその意図に沿ったものにならざるをえまい。

 こうしたイベントの中には、中身の濃い、放送する価値のあるものも多いだろう。幅広い情報や多様な考え方を提供するシンポジウムなどをじっくり伝えるのは、NHKに期待される役割の一つでもある。

 だからこそ、視聴者が放送内容を考える際の手がかりとして、イベントの主催者や運営の仕組みを番組の中で明らかにすべきだ。そうしないと番組の公正性に疑問がわく。

 NHKの中立で公正な番組作りを支えるために、視聴者は受信料を支払っている。それが見えない所で裏切られているのではないか。そんな疑いを抱かせるようなことは、すぐに改めた方がいい。

PR情報