◎消雷装置の開発 北陸の「減災」効果に期待
全国一の雷多発地帯である北陸には朗報だろう。金沢工大の饗庭貢教授が開発した「消
雷装置」は、落雷を50―70%ほど消滅させるという。情報通信社会の進展で、雷による通信ネットワーク機器などの被害は年間一千億円を超えるまでになっている。自然災害を完全に防ぐのは無理でも、被害を減らす工夫はできる。北陸の雷被害を減らす「減災」効果に期待したい。
二〇〇五年の年間観測日数で見ると、雷を観測した日数は、金沢で七十二日、輪島で五
十七日を数える。落雷は海岸線から三十五キロ以内に多く、特に冬は夏の数百倍のエネルギーを持つ強い雷が発生することも少なくない。落雷そのものが年々増えているわけではないが、電流の変化に弱い半導体機器が企業や家庭内で数多く使われるようになっているため、被害額も増加している。
北陸電力は、発雷予測や発雷状況を知らせる「雷情報」を流している。だが、予測はで
きても避雷針だけでは完全に防御できない。このため、さまざまな対策を組み合わせ、被害を最小限に抑える最適の仕組みが求められている。
今回、特許を取得した消雷装置は、雷を誘引する空気中の電気の移動を打ち消す効果が
あり、装置を避雷針に取り付けて使用する。金沢市内で行っている実証実験では、これまで良好な成績をおさめており、雷本番の冬場にかけてのデータが注目されよう。
白山市松任海浜公園で、一億三千万円を投じて建設された風力発電は、相次ぐ落雷で修
理費がかさみ、羽根が破損したのを機に解体された。落雷の威力は、直撃を受けた場合にとどまらない。たとえ避雷針に落ちても建物内に影響を及ぼすケースが少なくない。半導体機器でいえば、雷の直撃によるものより、近所に落ちた雷の電流が建物内に侵入し、ダメージを与える場合が多い。このほか、送電線への落雷で、瞬時電圧低下を起こし、半導体を大量に使用している生産設備が故障する例が報告されている。
北陸に住む限り、雷の影響は避けられない。十分な対策を講じて、被害を最小限に食い
止めたい。
◎絵本ワールド 読書習慣を育てる親の力
金沢、小松、白山市で二十二日に開幕した夏恒例の「親と子の絵本ワールド・イン・い
しかわ2008」では、会場に並べられた国内外の作品の中から、子どもと同じように夢中になってお気に入りの本を探す母親の姿があった。絵本の読み聞かせにしても、子どもにせがまれて仕方なく読むのと、親自身がその世界に引き込まれて読むのでは伝わる感動も違うだろう。読書の原体験ともいえる絵本に子どもが親しむには、親も楽しむ姿勢が欠かせない。
テレビや携帯用ゲームに熱中し、子どもが本を読まないという親の嘆きがよく聞かれる
が、それは子どものせいではなく、読書の楽しさを体験していないからであろう。インターネット社会が定着した今こそ、「生きる力」が心に宿り、人生をより深くしてくれる読書の習慣が大事である。本好きが育つのも親の力が大きいことを認識したい。
石川県が策定した「子ども読書活動推進計画」などでも、学校や地域とともに保護者や
家庭の責任が強調されている。学校では朝の読書タイムや図書館司書、ボランティアによる工夫を凝らした取り組みが進んでいるが、最も身近な大人である親が自宅でまったく本を開くこともなく、テレビをみて笑っているだけで子どもに読書への関心が芽生えるだろうか。
活字離れが指摘される中、英国のファンタジー小説「ハリー・ポッター」完結編が飛ぶ
ような売れ行きをみせている。もちろん流行に遅れまいとする意識もあるだろうが、あの分厚い本を子どもたちが一気に読み進めるのはやはりストーリーに引き込まれるからであろう。もっとおもしろい本があるのに、子どもたちは気づかないだけかもしれない。
夏休み期間中は各地で野外体験や地域行事が活発に行われている。親も積極的に世話を
しているが、読書で得た知識の蓄積があれば、そうした体験はより深く脳裏に刻まれ、血肉となる。「絵本ワールド」で絵本を媒介にして親子が心を通わせる姿は、親が子どもの読書習慣を促す最初の一歩と言えるだろう。