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潮流:四川の子供らに元気を=中国総局長・堀信一郎

 少女の口パク独唱、コンピューターグラフィックス(CG)の花火映像……。北京五輪の「なーんちゃって」ぶりには、苦笑させられる。そんな時にちょっといい話をひとつ。

 5月の四川大地震で被災した中高生など約130人が16日、北京の中国青年報に招かれ、日中韓3カ国の金メダリスト6人と交流した。子供たちに人気があったのが、ソウル五輪(88年)とバルセロナ五輪(92年)の女子板飛び込みで2連覇した中国の「飛び込み女王」高敏さんだった。

 四川省出身の高さんは、大地震発生の1週間後に被災地の綿陽市などを慰問した。四川省での聖火リレーにも参加、開会式での聖火リレーで「鳥の巣」も走った。子供たちはそれが縁で、高さんのことを知ったという。2回の聖火リレーを走った感想を聞かれた高さんは「光栄と幸運を感じた」と話した。

 地震発生から3カ月が経過した被災地は、北京五輪の華やかさとは無縁だ。このイベントを企画した中国青年報幹部は「子供たちに夢と勇気を与えたかった」と話す。中国共産主義青年団(共青団)と協力して1カ月がかりで中高生を選抜し、五輪観戦もプレゼントした。

 メダリストたちが被災地の子供たちに残したメッセージは「自分に負けないこと」だった。

 高さんは「圧力を感じて負けたら一生かかっても償えない。みんなも試験が近づくと自分も家族も緊張しますね。でも、その圧力は自分でしか乗り越えられない」と励ました。

 アーチェリー女子団体で金メダルを取った韓国代表の朴成賢(パクソンヒョン)さんも「練習が苦しくて何度もやめようと思った。たくさんの涙も流した。でも続けてきたのは愛する家族のためだった」と小さな声で話し、会場が静まり返った。

 韓国女子アーチェリーの尹玉姫(ユンオクヒ)さんは「四川省で被災した子供たちに言いたい」と切り出した。「私は貧しい家庭に生まれてアーチェリーを始めた。つらかったけど自分を励まして頑張ってきた。皆さんも頑張れば絶対に幸せになれます」と続けた。

 日本を代表して参加したのは、シドニー五輪(00年)柔道男子100キロ級金メダリストの井上康生さん。子供たちに握手攻めにされ、大きな体を小さくしていた。

 サインをもらってキャッキャッと喜んでいた女子学生は「えっ、この人だれ、日本の人? だって、カッコいいもん」とお構いなしだった。元気になってくれただけでも、よかった。

毎日新聞 2008年8月19日 東京朝刊

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