2008年01月18日

VOCALOID2操作(調教)法(15)

15.DAWを活用した修正(ステップ3)

 いよいよ最終調整。

 曲全体を聴いて、もう一度発音が不明瞭なところはないか、声質がばらつきすぎているところはないか、音量のばらつきはないかを確認する。
 たまに、出力されたWAVEファイルに「プチッ」といったノイズが入ってしまうことがある。このノイズは、なぜか分からないが、一度出ると何度再出力しても必ず同じ場所で出る。こういうときは運が悪かったと思って、ノイズが出ている音のアクセントを5〜10%程度上げ下げするなど、「その音を構成している要素」の何かを変更して、ノイズが出ない状態にする必要がある。
 それでもどうしてもノイズが出る場合は、非常に細かい調整をして、ノイズが出る場所のDYNを瞬間的にゼロにする(そしてすぐに元に戻す)と、発音はおかしくなるがノイズは最小限に抑えられる。

 また、特にリンの場合、音を伸ばしたときにキンキンした金属的なノイズが声に乗ってしまう場合がある。これはイコライザなどで消すしかないと思われるが、現時点ではどの周波数を削れば消えるかは発見できていない。

 これらの「修正系」の作業が終わって、まだ余力があるなら、次のような曲全体の最終調整を行なう。

・フレーズの頭など、はっきり発音したい音のアクセントを高める。またはVELを上げる。(発音に影響が出ることがあるので注意)
・BRIの全体調整として、ブレスを入れた直後の音はBRIを高めに、そこから息を続けるにしたがってBRIを下げていくような声質のうねりを導入する。
・曲全体に、クレッシェンドやデクレッシェンドのような音量の変化(うねり)を導入する。
・ビブラートやポルタメントの設定を修正する。
・曲全体のジェンダーファクターを上げたり下げたりして、しっくりする声質を見つける。

 これらの調整は裏目に出ることがあるので、vsqファイルはどんどん上書きせずに、複数のファイルを作って以前のバージョンに戻れるようにしておく。また、WAVEファイルも、複数のファイルを残しておいた方がDAW上で比較などもしやすい。

 これらの作業が一通り終わったら、DAW側のコンプレッサーやリバーブも調整して、伴奏と合わせて、曲を完成させる。


おまけに続く。
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2008年01月23日

VOCALOID2操作(調教)法(おまけ-1)

16.おまけ

(1) ポルタメントの法則

 デフォルト歌唱スタイルや個別の音符のプロパティで、上向ないし下向のポルタメントをオンにした場合、そのオンにした音符(音符1と呼ぶ)と、その直前の音符(音符0と呼ぶ)との関係が次のようになっている場合に、音が滑らかにつながる(ポルタメントがかかる)ようだ。(はっきりと分かっているわけではないし、時々違う挙動を示すこともあるが)

 ・音符0と音符1が「つながっている」
  ぴったりとくっついている必要はなく、通常の歌い方でも「音がつながって発音される」位置関係にあればよい。
 ・音符0と音符1との間に音程差がある
  上向がオンなら音符0<音符1、下向がオンなら音符0>音符1であるときにポルタメントがかかる。

 ・音符0よりも音符1の方が音の長さが長い
  同じ長さだとかからないようだ。

 これらの条件が揃うと、音符1を発音するときに、音符0の高さから始まって、滑らかに音符1の音の高さに移行する「ポルタメント」がかかる。
 なお、このときにコントロールパラメータは特に変化しない。(PITファクターも変わらない)。

 ちなみに、ポルタメントがかかっていた音符について、「発音が不明瞭」の問題を解決するために二重母音のテクニックを使うと、それまでかかっていたポルタメントがかからなくなることが多い。これは、二重母音にしたために上記の条件が満たされなくなるからである。
 この問題を回避するためには、@PITファクターを操作して手動でポルタメントを設定する、もしくはA音符1を分割して、音符0と同じ高さの音節と本来の音符1の高さの音節に分ける。この場合、二重母音にした最初の子音を音符0の高さに、後の母音を音符1の高さに置くとうまくいくときがある(ただ、この場合は母音だけの「音符1」にさらにポルタメントがかかって、ポルタメントが長くなって不自然になるときがあるので、そのときは最初の子音の長さを短くしたり、母音だけの「音符1」のプロパティを操作してポルタメントをオフにするなどの調整が必要になる。


続く。
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2008年01月24日

VOCALOID2操作(調教)法(おまけ-2)

17.おまけ(続き)

(2) 編集時の便利な操作

 なんかあまり整理されていないようなので、備忘録的にまとめておく。
 ここでの操作は、全部を網羅しているんじゃなくて、ちょっと便利なものだけをまとめたもの。

@ ピアノロール上の編集
 ・音符をクリックしてしばらく待っていると、発音してくれる。
 ・音符をダブルクリックすると、歌詞が入力できる。
 ・歌詞をまとめて入力したいときは、最初の音符を選択して右クリックで「歌詞の流し込み」を選ぶ。
 ・歌詞入力モードで「ALT」+「↓」を押すと、音節を直接編集できる。
 ・音符の下の線のうち、左端のとがった部分をダブルクリックすると「表情」の設定が出来る。
 ・音符の下の線のうち、左端のとがった部分は、アクセントを表現している。
  アクセントを強くすると、「とがり」も大きくなる。
 ・音符の下の線のうち、それ以外の部分をダブルクリックすると「ビブラート」の設定が出来る。
 ・音符の下の線で、右側にギザギザがある場合、それはビブラートを意味している。
  ギザギザの始点をつまんで左右に動かすと、ビブラートの開始位置を編集できる。
 ・ポインターツールを選び、「CTRL」を押しながらピアノロール画面をドラッグすると、その範囲の音符とコントロールトラックの全内容が選択できる。(これで、1番の歌を作りこんでそれをそのまま2番にコピーペーストできる)

A シーケンスウインドウ(ピアノロールの上にある、3段の黒い帯の部分)の操作
 ・編集ツールを選び、一番上の段でマウスをドラッグすると、始点・終点を設定できる。
 ・WAVEファイルは、始点・終点が有効になっている場合、その範囲だけ書き出される。
  始点のみ、あるいは終点のみ有効という設定もOK。
 ・初期設定のテンポ、拍子はプリメジャー(ピアノロール左端の黒いエリア)の始点で設定されているので、ここをダブルクリックして変更する。

B コントロールトラック(ピアノロールの下にある、パラメータ編集部分)の操作
 ・初期設定の歌手は、プリメジャーの左端のSINGERの段で設定されている。これをダブルクリックすると変更できる。

C 画面のその他部分の操作
 ・ピアノロールの鍵盤をクリックすると、「あー」でその音階を歌ってくれる。


続く。
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VOCALOID2操作(調教)法(おまけ-3)

18.おまけ(続き)

(3) 音素の直接編集

 VOCALOIDが発音できる音で、歌詞をそのまま打ち込んだ場合には設定されないものもいくつもある。
 ここでは、そんな発音の中で、滑舌の改善や表情づけのために「使える」ものをまとめておく。
 これらの音素は、音符をダブルクリックして歌詞の編集モードに入りさらに「ALT」+「↓」で音素の編集モードに入ることで設定できる。

(一度手作業で音素を編集すると、その音符は「プロテクトモード」に入り、歌詞や全体の歌唱スタイルを変更しても修正が適用されなくなる。これを解除するには、音符を右クリックで「音符のプロパティ」を選択肢、「プロテクト」のチェックを外せばOK。)

@ 子音のみの発音
 以下の発音は、子音だけで長く伸ばすことができる。
 「s」(スの子音のみ)
 「S」(シの子音のみ)
 「m」(ハミング。ただし、とても「m」とは思えない変な発音をすることも多い)

 これら以外の子音も英語の歌を歌わせるときなんかは使える。ただし、子音だけだと発音しないものもたくさんあるし、発音できる子音でも短い間隔で並べると発音しなくなったりする。この辺りは試行錯誤で。

A 子音+母音
 「w o」(「ウォ」の発音。ちなみに歌詞で「を」と置いてもデフォルトでは「o」が設定される。)


続く。
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2008年02月21日

VOCALOID2操作(調教)法(おまけ-4)

(4) コーラス作成のポイント

 コーラスを作ったときには、それぞれのトラックを「ランダマイズ」して発声のタイミングと音程を微妙にばらつかせると美しくなる。

 ポイントとしては、ランダマイズ前のvsqファイルは別に残しておくこと、音程のランダマイズはピッチコントロールを使うので、ピッチコントロールを手動で変化させて使っている場合は上書きされて消えてしまうので注意が必要だということくらい。
 ちなみに、著者の場合、ランダマイズはタイミングが2、音程が3で適用している。(ただし遅い曲の場合、タイミングずらしは1が限界)

 ただし、タイミングをずらすと、今までつながっていた音がつながらなくなったり、その逆が起こったり、発音のタイミングにあわせて設定してあるコントロールパラメータとの位置関係がずれたりするので、その辺りを再度調整する必要がある。

 なお、このランダマイズは、コーラスでないときでもうまく使うと人間っぽい歌い方を演出できる。

 また、多声の曲はそれぞれの声部のパン(左右の位置)を変えて、ステレオで出力するのが基本。
 これは、VOCALOID Editor内でやる場合は、メニューの「表示」→「ミキサー」でミキサーを表示させて調整し、WAVEファイル出力の際に出力を「ステレオ」にすることで対応できる。
 または、トラックごとに別々にWAVEファイルを出力して(この場合はモノラル出力にする)、DAW上でパンを変えてステレオミックスしてもよい。(恐らく後者のほうが融通が利く)

 もう一点、同じパートでいくつもトラックを作って厚みを出す場合は、ジェンダーファクターを変えたりランダマイズの大きさを変えたりDAW上で発声のタイミングを微妙に前後にずらしたりすると効果的。

 DAWでの編集では、コーラスエフェクトを使うかどうかを検討する(個人的には声の角が取れすぎてしまってあまり好きではないが、わずかにかけると厚みが増す)。リバーブはホール系を深めに。


(とりあえず完結)
posted by だんちゃん at 22:34| Comment(1) | TrackBack(0) | VOCALOID調教法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月11日

すっぴん調教法の動画を作った。

ミク、レンを使って、ぼかりすデモ曲「PROLOGUE」のカバーをやっていく中で、これからのボカロ調整(調教?)のありかたの一つをまとめてもいいかな、と思えるようになった。

それが、自分なりに「すっぴん調教」と呼んでいるやり方

これは、VOCALOIDのいわゆる「調教」を必要最小限にして、そこから先をDAWのコンプその他のエフェクターに任せてしまうやり方。

そのやり方のエッセンスを手短にまとめた動画を作って、アップした。




【お手軽調教】 VOCALOIDを「すっぴん調教」する 【初音ミク・鏡音レン】

VOCALOIDでカバー曲をいくつか作っていて、一番フラストレーションがたまったのが、「ノウハウが集積していかない」こと。
自分にセンスがないだけなんだけど、VOCALOIDの出力の「荒れ方」がいつも違っていて、そのつど試行錯誤で修正していっても、どうしても自分には「こうすればこうなる」という定型化した「職人技」が見つかってくるようにはならなかった。
(だから、ごく初期のカバー曲と最近のを比べても、「うまくなった」気がしない。)

それで最終的には、「コンプレッサーとかをうまく使って、アラを目立たせないように手早く仕上げるのが、結局、効率や安定性、再現性の面からは一番無難なんじゃないか」という結論に到達した。

その気持ちが、ぼかりすが出てさらに強くなった。
いわゆる「職人技の神調教」については、今後はどうしても「ぼかりす」が基準になってしまうだろう。(ぼかりす水準の表現力+ミクらしさ、みたいな)

そんな「ぼかりすvs職人」という構図でVOCALOIDのハードルが高くなりすぎてしまうことに対して、ささやかな「別の提案」として、あっさり仕上がって安定した「そこそこ水準」の結果が出せる「すっぴん調教」のやり方をまとめておきたいな、と思った。

もちろん、ここでまとめたことは、DTMerなら普通にやっていることだと思う。自分は、大昔を除けばここ半年くらいしかDTMをやっていない素人なので、こんな動画を作るのは恐れ多いな、とも思った。
でも、まあ叩かれれば引っ込めればいいや、ということでとりあえず作ってみた。

アップした気持ちとしては、動画のなかにも書いたとおり、これからボカロを始めようか迷っている人の背中を押したい、ということ。
この動画を見て、「なんだボカロって簡単なんだな、じゃあやってみようかな」と思う人が一人でもいたら、この動画を作った意味があったということで・・・。

追記:「初音ミクみく」さんに取り上げていただきました。
posted by だんちゃん at 17:15| Comment(6) | TrackBack(1) | VOCALOID調教法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月18日

すっぴん調教・続き

すっぴん調教への反響ありがとうございます。

ニコニコ大百科(仮)にも、さっそくどなたかが項目を立ててくださいました。(これ書いたの自分ではないです。というか、プレミア会員ではないので・・・)
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%99%E3%81%A3%E3%81%B4%E3%82%93%E8%AA%BF%E6%95%99

コメントでいくつかご質問&ご意見をいただいていますので、お答えしたいと思います。

続きを読む
posted by だんちゃん at 15:58| Comment(0) | TrackBack(0) | VOCALOID調教法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月29日

すっぴん調教に使ってるVSTエフェクトを晒してみる。

以前アップした「すっぴん調教」の動画では、話を簡単にするために、BLOCKFISHとBuzMaxi3しか登場させなかったけど、もちろん実際にはもう少しいろいろ使っている。
そんなわけで、今回は、自分が調整するために使っているフリーのVSTエフェクトを整理してみようと思う。

(1)コンプレッサー

BLOCKFISH

blockfish

いわゆるマキシマイザーを除くと、コンプはほぼこれ1本。
コンプには、出音がナチュラルなものと、クセがつくものとあると思うけど、このコンプは相当「クセがつく」タイプのコンプだと思う。
「すっぴん調教」動画で紹介していたように、「close-up vocals」のプリセットをまず選んで、そこから微調整して使っている。

「the fish fillets」のパッケージの中に入っている。digitalfishphonesのサイトからダウンロード可能。


(2)ディエッサー

SPITFISH

spitfish

BLOCKFISHを紹介したので、同じ「the fish fillets」のパッケージの中に入っている、このディエッサもここで紹介。
これはサ行を中心とした、耳障りな高音のアタックを丸くするエフェクト。
「female voice (soft)」のプリセットを基準に、微調整して使っている。

(3)イコライザー

Electri-Q (posihfopit edition)

Electri-Q

グラフィカルなパラメトリックイコライザ。プリセットがたくさんついているのと、いくらでも操作点が増やせるのとで非常に便利なので常用している。
AIXCOUSTIC CREATIONSのサイトからダウンロードできる。

PushTec 5+1A

pushtec

プリセットがたくさんあって、ミキシングに使えるパライコ。ただ、インターフェイスが斬新過ぎて実はよく分かっていない(笑)。
プリセットをぐるぐる選んでいって、イメージに近い音が出たらそれを使う、という感じでいい加減に使っている。(でも、The 60sからThe 90sまでの「年代を感じさせるミキシングプリセット」は、おっさんホイホイ用のミキシングにはなかなか使える(笑))

leftover lasagneのページまたはKVRのページでダウンロードできる。

(4)マキシマイザー

BuzMaxi3

BuzMaxi3

すっぴん調教動画で使用しているマキシマイザー。これは、出音にクセをつけたくないとき(例:ファイナルミックス)に使っている。
buzroomのサイトからダウンロードできる。


TLs Pocket Limiter

TLs Pocket Limiter

こちらは、出音にアナログアンプっぽい色がつく(気がする)ので、ボーカルの音圧を上げたりするときにはこっちを使うことが多い。
www.tinbrooketales.comでダウンロードできる。

(5)その他

MDA Detune

mda detune

ピッチを微妙にずらして音に厚みを加えるデチューンエフェクト。
メインボーカルをボカロエディタ上でランダマイズしてもう1つオーディオトラックを作って、それにこのデチューンの「Stereo Detune」のプリセットをかけたものを薄く乗せることで、ボーカルに厚みと広がりを持たせるために使っている。デチューンをかけたくないときは、同じMDAシリーズの「MDA Stereo」もよく使う。
MDA-VSTのページから、ひとまとまりでダウンロードできる。

(6)Music Creator 4のエフェクト



リバーブ(StudioVerb2)、ディレイ(Delay)、コーラス(Multivoice Chorus/Flanger)については、Music Creator 4にプリセットされたエフェクトを使っていて今のところ不満がないので、外部プラグインは使っていない。


※参考までに、今回アップした「さよならのめまい」でのエフェクトの配置がこちら。

sayonara_mix.jpg

上記で紹介したエフェクトをひととおり使っているのが分かると思う。
ボーカルが2つあるのは、片方はメイン、片方はランダマイズした上でデチューンとリバーブを厚めにかけて薄く乗せて、声に厚みを出すためのトラック。

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2008年08月04日

がくっぽいど使用感、とりあえず現時点のまとめ。

先日のがくっぽいどの記事ですが、「アキバOS」さんからリンクしていただきました。ありがとうございます。

がくっぽいどの使用感についての情報のニーズが高そうなので、まだ数曲歌わせただけだけど、これまでに感じていることを書いていきたいと思う。

1.ミク・リンレンと比べての使いやすさは?

 個人的には、ミク>>レン>=がくぽ>>>>リン という感じ。
 レンは、個人的にすっぴん調教でうまく歌わせるコツを体得したからこの順位という感じ(しかも自分の場合はACT1が対象)なので、一般の方にとっては「ミク>>がくぽ>>>>リンレン」だと思う。

2.使いやすいところ、使いにくいところとは?

 使いやすいところは、以下のようなところ。

 ・ベタ打ちでもそれなりに滑舌がよく、歌詞が聞き取れること(ミクほどではないがリンレンよりはるかにマシ)。
 ・ベタ打ちでも、それなりに人間的な表情を込めて歌ってくれる(この点はダントツ。ミクもはるかに上回る)。
 ・歌の途中で声質が激変したり、発声タイミングが大きく狂ったりといった破綻が少ない。
 ・やっぱり初のネイティブ男声のVOCALOID2ということで、これまで応えられなかったニーズに応えられる。


 一方、使いにくい、というか、手間のかかるところは、以下のようなところ。

 ・全体的に音がコモリ気味(BRI、CLE、GENなどの調整に加え、DAWでイコライジングする必要があると思われる)
 ・なまじベタ打ちで表情が出るだけに、ベタ打ちのままだと「単調すぎる表情」がついて気持ち悪い感じになる(=やや不気味の谷的な歌い方になる)
 ・後で書くように、発音のタイミングがわずかに不正確なので、表現力を上げるためにはかなり細かい調整が必要になる
 ・発声の始まりから終わりまでの間にかなり変化がある(特にアタック部分にくせがある)ので、すっぴん調教で多用するしゃくり上げのピッチベンドなどが不自然になりやすい。


 まとめて書くと、

 ・初心者がベタ打ちで楽しむ分には、ミク並に扱いやすい。「人間っぽく歌わせやすい」という意味では、むしろミクよりも敷居が低い。

 ・ところが、中級以上の歌わせ方をしようと思うと、調整すべきポイントが多数に存在していて、かなり手間のかかるボカロ。

 ・ただ、いじることによる変化の幅も大きそうなので、上級者がしっかり調整すると、初心者が到達しえない「神調教」になる可能性が高い。


 といった感じだろうか。初心者のベタ打ちにも優しく、上級者のきめ細かい調整にも応えられる、懐の深いボカロに仕上がっていると思う。
 「当たり・外れ」の二択で評価するなら、十分「当たり」なんじゃないかという感じがする。

3.音域は?

 CVシリーズと同じ音域で歌わせると、その時点ですでに「高音域の苦しいところで歌っている」という感じになってしまう。CVシリーズと同じ雰囲気で歌わせるには、丸々1オクターブ下げるとちょうどいい感じ。高音はすぐに苦しくなる代わりに、低音はどこまででも出るような感じで、低音側に音域が広がっている印象が強い。

4.CVシリーズとの相性は?

 使い方次第だと思われる。
 普通のMIXで合わせると、がくぽだけ声が低すぎ・声質が人間っぽすぎで浮いてしまう気がする。
 がくぽにメインボーカルを張らせて、「がくぽ VS CVシリーズ」という対立を楽しむ楽曲にするか、複数のがくぽでコーラスを歌わせて和声の響きで「人間っぽさ」が前に出すぎるのをうまく調整するか、がくぽの出音をDAWで調整してあえて人間っぽさを減らす(Perfumeの声みたいな方向に加工する)か、いずれかのアプローチがうまくいくような気がする。
 ただ、既存のどのボカロとも似ていない声質なので、合わせがいはあるんじゃないだろうか。

5.独特のクセは?

1)ラ行がしばしば巻き舌になる。これはかなり笑える。
2)音を伸ばすと、最後のところに変な母音が乗っかる。たとえば、「らー」と伸ばして歌わせると、「らーーーーーうぁ」みたいな終わり方になる。歌い方の味になることもありますが、ちょっとクセが強すぎる感じ。伸ばす音はDYNを削ってDYNゼロで終わらせるとかの工夫が必要。
3)発音タイミングが結構不正確。ミクは大安定で、リンレンはたまにとんでもなくタイミングがずれるという感じだけど、がくぽはかなりの頻度でほんのわずかだけタイミングがずれる。初心者だと気づきにくいくらいのズレだけど、これのせいで音痴っぽく・ロボっぽく聞こえることがしばしばある。ずれの度合いは64分音符よりはるかに小さいので、クオンタイズと音符の長さをフリーにして、0.何ミリ単位で音符をずらして調整する必要がある(逆に、これをやるとミク並の安定感が出てくる)。
4)歌い方が、シャウトとバラードの中間くらいの感じなので、シャウトさせると迫力が足りず、バラードを歌うと元気すぎると感じる。変な表現だけど「軽妙に歌う」のが一番簡単そう。シャウトやバラードに適応させるには、BRIをいじったり、こんぷをうまく使って声のアタックを強調したりと、いろいろ工夫が必要だと思う。
5)音と音が「つながりやすい」か「つながりにくい」かというと、かなり「つながりやすい」タイプのボカロだと思う。上記2)のような語尾の変化のせいもあって、休符をあまり入れないで打ち込むと、ずーっと大きな声で歌いつづけているような感じになって、「どこで息継ぎしてるんだ!」といった不自然さが出るので、休符の部分では思い切って長く休ませるのが良さそう。

6.最後に

がくっぽいどで、もしかすると一番大変なことは、「誰もが『人間が歌っている』という基準で聞いてしまうこと」かもしれない。
ミクのような、ある意味「人間離れした純化された歌声」っていうのは、それ自体がある種の完成品であって、人間っぽく歌わせなくても「そういう歌い方なんだ」と開き直れるところがある。(がくっぽいどを使ってみて、この「純化された人間離れした声質」というクリプトンのアプローチは、実はすごい発明だったんだと改めて気づいた)
一方、がくぽの場合は、ベタ打ちすると「中途半端に人間っぽく、中途半端にロボっぽい歌声」が出てくる。下手に人間っぽいので、調整する側も聞く側も、どうしても「こういうものなんだ」と割り切ることができず、「もっと人間っぽく、ロボっぽさを減らさなければ」と思ってしまいがちだ。

そして、その「期待」に応えようと思うと、相当タフな調整が必要になってくる(今のところ、それにかなり応えてくれそうなので、それが素晴らしいところでもあり、ますます大変なところでもあるんだけど(笑))。

でも、調整にものすごい苦労をしたその先にあるのが、「人間のコピー」でしかないのなら、それはちょっとつまらないかも。
「人間っぽい歌声」のがくっぽいどで、「人間の歌のコピーを超えた付加価値」をどうやって出していくのか、というのが、実はすごく大切な挑戦になるのかもしれないな。
posted by だんちゃん at 20:23| Comment(0) | TrackBack(0) | VOCALOID調教法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする