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【社会】

父親の英国人、男児死なす 『揺さぶられ症候群』で逮捕

2008年8月22日 朝刊

 生後十二日の長男を虐待して「乳幼児揺さぶられ症候群」の症状などで死亡させたとして、警視庁組織犯罪対策二課と青梅署は二十一日、傷害致死の疑いで、父親で英国籍の無職アンソニー・ロス・ブックリー容疑者(20)=東京都青梅市師岡町一=を逮捕した。

 調べでは、同容疑者は今年六月十八日午前、妻(19)が留守の間、自宅で長男の義光・リオちゃんの頭を激しく揺さぶるなどして、翌日、硬膜下血腫で死亡させた疑い。「強い力で揺さぶり、キッチンのテーブルに後頭部をぶつけた」と容疑を認めているという。

 同課などは、同容疑者が日本語が自由に話せないことや育児ストレスなどから、犯行に至ったとみている。

 同課は病院からの通報で捜査を開始。同容疑者は任意の事情聴取に「風呂に入れていて落ちてしまった」と主張していたが、同課が解剖や医師の意見を基に捜査を進めた結果、故意に揺さぶったり頭をぶつけたりした疑いが強まり、立件に踏み切った。

「深刻な虐待」立件に積極的 捜査当局

 米国で研究が進んでいた乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)が日本で知られ始めたのは、ここ数年。専門家によると、SBSは脳内が損傷しても外傷がなく、被害の見過ごしも多かった。しかし、児童虐待が社会問題となる中、捜査当局はSBSを深刻な虐待ととらえ、積極的に立件する姿勢を見せている。

 横浜市で昨年五月、生後五カ月の男児が死亡した事件では、父親が「『高い高い』などであやしただけ」と無罪を主張したが、横浜地裁は「あやしただけでSBSは生じない」と判断。「一秒間に二−四回の周期で数秒続く激烈な揺さぶりだった」とする検察側の主張を認め、実刑判決を言い渡した。

 SBSに詳しい大阪府の箕面市立病院の有滝健太郎医師は「米国ではSBSで年間千人が死亡する統計がある。日本では統計がなく埋もれているものがかなりあり、医師が症状を正しく理解しているとも言えないのが現状。刑事責任が問われ、広く取り上げられることが、SBS抑止につながるのでは」と話している。

 

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