民家に子供3人を約10日間置き去りにして1人を死亡させるなどしたとして保護責任者遺棄致死と同致傷罪に問われた三郷市早稲田、無職、島村恵美被告(30)の初公判が20日、さいたま地裁(中谷雄二郎裁判長)であった。検察側が「育児が煩わしかった」と指摘したのに対し、弁護側は動機面で争う構えをみせた。また、検察側は「同世代の独身女性のように海外旅行をしたり、自由な生活を送りたかった。家族が子育てを手伝ってくれず、自分を犠牲にした育児がばからしくなった」という被告本人の供述調書を読み上げた。
証言台の前に立った島村被告の声は聞き取れないほど小さく、起訴事実の認否を問われると無言でうつむき、代わりに弁護人が「事実関係については争いがないが、動機の部分で異議がある。いろんな要因で追いつめられていた」と主張した。
検察側の冒頭陳述によると、島村被告は交際相手と同せいするため、3月3日に1人で転居。それまで住んでいた3世帯住宅の祖父母宅に12日ごろまで、十分な食事を与えずに次男(当時2歳)を放置し、脱水症や低栄養により餓死させた。双子の長女も同様に放置し、10日間の入院が必要な状態にした。
島村被告は昨年12月中旬ごろから、ほぼ毎晩1人で外出して居酒屋で酒を飲むようになり、今年に入ると掃除を全くせず、ゴミや使用済みのおむつを室内に放置。次男らのおむつ交換や入浴もさせなくなった。2月下旬、行きつけの居酒屋の従業員と交際し、2人で暮らしたいと考えるようになり、6歳の長男に「ママはもう戻らない。後はよろしく。次男と長女の面倒は見てね」と言い残しマンションに移った。
転居した3月3日以降、長男は連日数十回、「弟と妹が泣いている」「おなかがすいた」と電話で助けを求めたが、1日に1~2回玄関までファストフードを届ける程度だったという。
一方、弁護側の冒頭陳述では「中学時代にアル中の父から暴力を受け両親が離婚するなど寂しい思いをしており、育児放棄に走りやすい性格だった」「祖母や母、内縁の夫らが助けてくれず、孤独を感じていた」などと指摘し、被告の生育歴や人間関係も考慮するよう求めた。【小泉大士】
毎日新聞 2008年8月21日 地方版