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コスプレ五輪に13カ国 呉智英さんと鑑賞

2008年8月21日

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写真パレードの合間にポーズを決めるコスプレサミットの参加者たち=2日、名古屋市中区の大須商店街、いずれも加藤丈朗撮影写真ジョルジアさんのパフォーマンスを見る呉智英さん(右)=名古屋市中区の大須観音

 日本のマンガやアニメのキャラクターに扮した若者たちが海外から集う「世界コスプレサミット」が名古屋市で開かれた。6回目の今年はアメリカ、フランス、スペイン、中国など13カ国での予選を勝ち抜いた28人がパフォーマンスを競った。年々参加国が増え、「コスプレのオリンピック」を目指す勢いの催しを、評論家の呉智英さんと歩いてみた。(小林裕子)

 名古屋の夏はとかく暑い。サミット初日の8月2日も夕方というのに気温34度。体がとろけそうだ。パソコン関連やアニメのフィギュア販売店が集まり「名古屋の秋葉原」と呼ばれる大須商店街で、約300人のコスプレーヤーのパレードが始まった。100メートル近い列をカメラを手にしたファンが取り囲む。「すごい熱気だね〜。サウナにいるみたいだ」と、うちわであおぎながら呉さんがつぶやく。

 「美少女戦士セーラームーン」や「ストリートファイター」など人気のキャラクターもいれば、メードの衣装や、セーラー服を着た単なる女子高生みたいなのもちらほら。「これ、だれ?」と言いつつもカメラを向けるファンを見て、「『ドラえもん』などだれもが知っている国民的マンガのキャラクターじゃなくて、自分が感情移入しやすいファンタジー系が好まれるみたいだね」と呉さん。

 パレードは商店街を1時間ほど練り歩き、大須観音に到着。カメラ小僧はお気に入りのコスプレーヤーに群がり、境内で撮影会が始まった。注目を集めたのはバレーの「アタックNo.1」の主人公、鮎原こずえに変装したイタリアのジョルジア・ベッキーニさん。コスプレ歴11年で、05年「サミット」で優勝してから毎年来日している。

 呉さん「日本のアニメに興味を持ったきっかけは?」

 ジョルジアさん「子どものころテレビで見た『ガラスの仮面』や『ベルサイユのばら』に魅せられた。イタリアはベネチアのカーニバルが有名だけど伝統的な衣装を着るだけ。コスプレはキャラクターになりきることができて夢を味わえる」

 翌日は繁華街にある公園「オアシス21」で、世界一を決めるチャンピオン大会が開かれた。亡くなったマンガ家赤塚不二夫さんの冥福を祈ったあと開幕。昨年より2千人多い約1万2千人(主催のテレビ愛知発表)が訪れ、熱気は前日と変わらず。

 各国代表は「日本のマンガ、アニメ」をテーマに2人1組で3分間のパフォーマンスを競う。手作りの衣装、パフォーマンス、原作への忠実さの3点で総合評価される。

 女性2人がアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ」の美少年に扮した日本代表(大阪)は、登場から盛り上がる。2人が刺し違えたあとに口づけすると「キャー」という歓声があがった。呉さんは「まるで宝塚。演技はセミプロに近いし、何かの形でデビューしようともくろんでいるんじゃないかな」。2人は「9月にニューヨークで開かれるコスプレ大会に呼ばれている」そうで、ちょっとしたコスプレ界のスターだ。

 優勝は2.7メートルのロボットのかぶり物で弾丸を連射する派手なアクションを披露したブラジル。日本代表は特別賞だった。

 高レベルの競演の一方、衣装替えに手間取ったり道具に凝りすぎたり、意味不明のパフォーマンスも。会場のテンションも一瞬下がり、審査員並みに目が厳しい。「大がかりな舞台装置や華麗な演技は趣味の域を完全に超えている。ますますスペクタクル化していくのでは。今後も目が離せないね」と呉さん。

 コスプレサミットは海外のマンガ、アニメ人気に注目したテレビ愛知が03年、海外のコスプレーヤーを招きローカル番組を作ったのを機に始まった。来年は新たに8カ国が参加を希望。次回も熱い祭典になりそうだ。

■泣く観客、奇観

 マンガやアニメをテーマにした現代版仮装大会という感じですね。でも、若者文化による町おこしとしても注目に値します。

 コスプレが世界に広まっているのは、歌舞伎や茶の湯だけではない現代日本の大衆文化にも関心が高まっているからです。日本の認知度が上がり、日本に親近感を持つ人たちが増えることは、外交、貿易などの観点からも重要です。外務省、国交省が後援しているのも当然でしょう。

 マンガ研究者としては、もっといろいろなマンガに注目してもらいたいと思います。コスプレは自分がヒーロー、ヒロイン気分にひたるものですが、日本マンガはそれだけではない広がりと深みを持っていますから。つげ義春の「ねじ式」とか楳図かずおの「わたしは真悟」のコスプレなんてやったらすごいかも。

 観客がすぐ感動して泣くのはちょっとした奇観でした。若者たちはそんなに感動したがっているのかな。私がやるなら? 「サザエさん」のお父さん、波平あたりかな。そのままでいけるしね。(談)

    ◇

くれ・ともふさ 46年生まれ。京都精華大学マンガ学部客員教授。『現代マンガの全体像』(双葉文庫)など著書多数。

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