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【医療と刑事捜査(中)】免責は特権か 萎縮の歯止めか (1/2ページ)

2008.8.21 21:35

 7月29日、自民党の「医療紛争処理のあり方検討会」が開かれた。席上、座長の大村秀章衆院議員は、救急救命に関係した医療事故に限定して医師らの刑事責任を免除するという刑法改正の私案をぶち挙げた。

 大野病院事件が立件されたことで、「最善を尽くしたつもりでも逮捕されるのでは、医療が成り立たない」と萎縮(いしゅく)している医療界にとっては心強い制度だ。

 大村座長は興奮気味に続けた。

 「医療事故調(医療安全調査委員会)構想に懸念を示す一部の医師もこれなら乗れる。医療事故調の設置法案とセットで国会提出したい」

 免責範囲を救急救命に限定したのは、専門領域以外の重篤患者に緊急処置をする必要があり、事故と隣り合わせだからだ。当然、他の診療分野や被害者や遺族からも反対の声があがるだろうし、現行法体系を崩し、医者に“特権”を与えることには法務省の反対も容易に想像できる。

 「法務省は渋い顔をしていた。簡単に通るとは思っていない。劇薬だが、こうでもしないと医療事故調設置の話が前に進まない」と、大村座長は刑事免責の必要性を強調する。

■   ■

 医療死亡事故の原因や再発防止を、刑事捜査に優先して専門家らが調べるという「医療事故調」構想が実現すれば、医療機関は医療事故の届け出を、警察ではなくて事故調にすることになる。その場合、刑事責任はどうなるのか。そこが曖昧(あいまい)なことが事故調の設置法案提出が見送られている最大の要因の一つだ。

 7月28日に日本医学会が東京都内で開いたシンポジウムで、日本外科学会の高本真一理事が法務・警察機関との協議経過を明かした。

 「当初、警察庁は『医療事故調で調べた全事例を警察に報告せよ』と主張していた。その後、協議を重ね『重大な過失や故意』の事例だけを通報することになった」。大野病院のようなケースなら警察へは通知されず、刑事責任は問われないことになるという。

 しかし、会場からは「『重大な過失』の判断基準は何か?」「密室で法務・警察と協議しないでほしい」「事故調の結論が、捜査機関に渡るのはおかしい」といった疑問や批判が相次いだ。

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