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2008年8月22日

◎ふるさと愛の源 自信を持ってお国自慢を

 二十一回目のジャパンテントが、今年も「ふるさと愛」をテーマに開幕した。石川の地 が留学生たちにとって、日本の“ふるさと”となるように、もてなす側も自信と誇りをもって、ふるさと愛の源である「お国自慢」の交流を広げたい。

 この二十年間、ジャパンテントが結んだきずなは、幅広い分野で民間外交の実を結んで いる。今秋、治療のため再来日するコソボのネジール君の目の手術が九年前に金大で行われたのは、アルバニアの留学生がジャパンテントに参加したことがきっかけだった。昨年秋には、タイのジャパンテント参加者が縁結び役となって、石川県とタイ南部の県の友好協会が姉妹提携している。

 また、五月の大型サイクロンで甚大な被害が出たミャンマーから、被災者の支援を求め るジャパンテント大使のメールが事務局に届き、石川・ミャンマー友好協会の会長が、生活物資を直接現地に届ける形で支援の一翼を担ったことは記憶に新しい。

 これらの実りは、自然体で留学生と接し、「日本の家族」として帰国後も温かい心のつ ながりを持ち続ける多くのホストファミリーや、献身的な地元の学生ボランティアの功績と言えるだろう。またそれは、石川の地が、良き日本の伝統文化と風土を残していることとも無関係ではあるまい。

 青年海外協力隊などで諸外国に赴いた人が異口同音に強調することは、どこの国も、自 国の伝統に対する誇りと尊敬の念が、日本で考える以上に強いことである。

 七十二の国と地域の留学生が集う今回のジャパンテントでは、伝統文化を体験する「金 沢職人大学校」が二日間に拡充され、金沢のお家芸とも言える金箔(きんぱく)や和菓子づくりに挑戦する。輪島では輪島塗、小松では九谷焼といった「石川ブランド」の制作体験もある。

 手わざのぬくもりが、日常生活と居住空間の中に自然に溶け込んでいることを肌で感じ た留学生は、郷土の歴史と伝統に対する石川のふるさと愛の深さも実感するに違いない。迎える側も留学生も、大いにお国自慢のエールを交換したい。

◎若ノ鵬解雇 部屋任せの教育に限界

 日本相撲協会がロシア出身の若ノ鵬を解雇処分にしたのは、現役幕内力士の逮捕という 衝撃の大きさを考えれば致し方ないだろう。今回の大麻所持事件は素行不良の一個人の問題というより、大相撲で急激に進んだ「国際化」の負の側面がみえてくる。協会が今後も国際化を推進するなら、それにふさわしい教育の仕組みを整える必要がある。

 両横綱をはじめ、幕内力士四十二人のうち外国人は十四人を占め、今や角界を担う主役 である。にもかかわらず、日本人だけの時代と同じような旧態依然とした部屋制度のままで指導、教育は十分に行き届くだろうか。国際化に協会側の意識が追いついていないようにも思える。角界の因習の中に外国人力士を押し込めるだけでなく、良き伝統は大事にしながら、国際化に合わせて変わっていく柔軟さも持ち合わせてほしい。

 若ノ鵬は初土俵から二年半のスピード出世により十九歳三カ月で入幕した。間垣部屋の 部屋頭であり、番付優先の世界では周囲はものがいえなくなる。そこで問われるのが親方の指導力である。

 だが、一部の親方は別として、朝青龍の一連の騒動をみても部屋任せの教育に限界があ るのは明らかだ。日本人なら小さいころからテレビで大相撲をみて、その特別な存在感を知ることができる。一方、日本語も不十分な外国人が角界のしきたりに慣れ、責任を自覚するには日本人以上の時間を要する。新弟子を教育する相撲教習所では一定期間の研修を実施しているが、外国人の場合、関取になった後も含め、教育システムを手厚くする必要があろう。

 時津風部屋の力士死亡事件や朝青龍騒動など、この一年余りの大相撲の不祥事は目にあ まる。それに比べ、腰が重く見えるのが協会側の対応だ。北の湖理事長以下、協会幹部が力士出身ばかりでは閉鎖的な体質を変えることは難しいのではないか。組織に外部人材を積極的に登用することを真剣に考える時である。ここで思い切った改革を進めなければ、せっかくの国際化も大相撲離れを招く要因になりかねない。


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