怪談・肝試し大会で幽霊が… 夏休みも終わりに近づいたある日、さよちゃんがこう言った。 さよ「肝試しをしてみないか?」 さよちゃんが言ったことを聞いたさきみちゃんたちはビックリした。 つまり、今日は肝試し当日である。 昌平「確か、ここら辺だったらしいな…。」 あい「夕方なのに、やけに静かだね…。」 参加者は、星原さきみ、天宮さよ、向井ちさと、巽 昌平、瀬川あい、渡辺リョウの計6人。 リョウ「おい…ここじゃないのか、肝試しの場所は?」 一同がやって来た場所…そこは既に廃墟と化した4階建ての小さな病院であった。 ちさと「何だか、怖そうな気がするね…。」 昌平「と…とりあえず入ってみようか。確か、集合の時に言う合言葉は…。」 昌平くんの一言で、全員で一斉に合言葉を叫ぶ。 一同「たのも〜〜〜〜っ!!」 次の瞬間、関門開きの朽ちた扉が開いた。 ギイィ〜〜〜〜〜ッ…。 ?「皆様…お待ちしておりました…。」 一同「うわあああああああ!」 一同は絶叫した。目の前に現れたのは、懐中電灯で顔だけを照らした女の子だった。彼女はさきみちゃんのクラスメートで心霊マニア(?)の、仙田百合子であった。 リョウ「いきなり脅かすんじゃねえよ!」 さきみ「た…確か、彼女はあたしのお姉さんの知り合いなのか…?」 さよ「あ…あの、集合はここって…。」 百合子「みゆきちゃんは奥で待っています。どうぞ中へ…。」 一同は百合子ちゃんの案内で廊下を歩き、奥へと進む。天井には蛍光灯が付いてあるが、点灯はまったくしていない。どうやら、もう電気も送られていないようだ。かわりにみゆきちゃんが置いたと思われる燭台がいくつか置かれており、薄暗い廊下を灯していた。 ちさと「何だか…怖いな…。」 昌平「心配するな!俺たちがついているから!」 リョウ「それにしても…ここは廃墟だから立ち入りが禁じられているんじゃないのか?」 百合子「ご心配ありません。ここは私が1年前から目をつけていた場所なのです…。この日のために町内会に使用許可をとってもらい、準備をしておりました…。」 さよ「いつの間に…。」 やがて、1つの部屋の前に着いた。 百合子「こちらでございます…。」 ギイィィィィ〜〜〜〜〜。扉が開く。奥には百合子ちゃんと同様、懐中電灯で顔だけを照らしていたみゆきちゃんが座っていた。 みゆき「ようこそ皆さん…お待ちしていました…。」 さよ「こ…こんばんは…みゆきちゃん…。」 さきみ「や…やっぱり、来ていたんだね…。」 この時、時計は既に6時半を過ぎていたのであった。 百合子「肝試しは8時からを予定しています。まずは夕食にしましょう…。」 既に百合子ちゃんとみゆきちゃんがテーブルに料理を用意していた。テーブルは一応テーブルクロスを敷いており、ロウソクで灯かりが灯っている。 昌平「ここで夕食なのか!?しょうがないか…。」 百合子「はい…どうぞ召し上がって下さい…。」 リョウ「じゃあ…お言葉に甘えて…。」 さきみ「い…頂きます…。」 一同は食事を始めた。食事の最中、みゆきちゃんがこんなことを言った。 みゆき「ではお話しましょう…。あたしがこの廃墟を選んだ理由を…。そしてこの病院で何が起きたのかを…。」 ――20年前のある日のことです…。トラックにはねられた1人の患者がこの病院に入院してきました…。医者たちは懸命に患者の手当てをしたり、手術をしたりしましたが、時既に遅く、患者は帰らぬ人となってしまいました。この事が原因で、病院は遠くの町へと移転してしまい、誰もいなくなってしまいました。そしてこの病院を取り壊すという計画が持ち上がったのですが、とんでもない恐怖が待っていたのです…。移転から2年後、現場作業員が何者かに取り憑かれたかのように絶叫し、事故を起こして大けが…、その2年後には今度はかつて病院で働いていた元医者が謎のがん死、さらに、そのまた2年後にはかつての入院患者が…。―― さきみ「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜っ!!!!」 あい「いやああああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!!!!」 悲鳴をあげるさきみちゃんとあいちゃん、そしてそれに驚く一同。 さよ「に…2年ごとに、この病院に関わった人に何かが起きたのか…?…何だか怖い…。」 リョウ「こ…これは冗談じゃないぜ…。」 みゆき「でも20年前、実際にそういう出来事があったのは確かです…。結局、取り壊しが断念されるまで、何らかの形で多数の被害者が出ました…。トラックにはねられた彼の怨念に満ちた魂は、死してなお病院を彷徨い、仲間を求めて次々と病院の人間を自分の元へと…。」 さきみ、あい「も゛う゛や゛め゛でぐれ゛〜〜〜〜っ゛!!」 さらに続く恐怖話に耐えかね、遂にさきみちゃんとあいちゃんは気絶した。 昌平「とうとう気絶してしまったじゃないか!」 みゆき「仕方ありませんね…。それじゃ、2人が起きてから本番の肝試しを始めましょうか。」 この時、誰もまだ思いもよらなかった。この後、悪夢の夜が始まることを…。 夜8時をまわった。いよいよ肝試しの開始である。 みゆき「はい、それではいよいよ肝試しの始まりで〜す!」 リョウ「おいおい、マジかよ…。」 みゆき「それでは、ルールの説明をします。ペアでチームを組み、20分以内にこの病院をまわってください。小さい病院なので、20分もあれば十分まわれます。そして最終的に最も短い時間で戻ってきたチームが勝ちです。」 みゆきちゃんがが軽く説明し、くじ引きでペアが決定。いよいよ最初のチームが出発である。最初のチームは、昌平くんとリョウくんのペアである。 昌平「それじゃ、行ってくるね…。」 6人「行ってらっしゃーい!」 昌平くんとリョウくんは、懐中電灯を持って3階へと向かった。 リョウ「何だか、怖そうだな…。」 昌平「それもそうだな…。」 その時だった。 昌平「うっ!!」 リョウ「何か、音出てなかった…。」 昌平「き…気のせいだろ…。」 リョウ「いや…何か聞こえた気が…。」 2人は振り向いた。そこには、おどろおどろしい幽霊の姿があった…。 2人「ギョエ―――――――ッ!!!!」 2人は、慌ててみゆきちゃんたちのいる場所へと戻った。 みゆき「どうだった?」 リョウ「で、で、で、出たんだよーっ!!」 昌平「ありゃ本当に本物だぜーっ!!」 百合子「その話は本当だと思いますよ。」 ちさと「本当か?」 百合子「おそらく、4年前に突然の病気で亡くなった看護婦さんの霊が存在していますから…。」 さよ「それって、マジ…?」 とりあえず、次のペアが出発した。次のペアは、ちさとちゃんとあいちゃんである。2人は、2階を探索した。 あい「本当に幽霊なんて出てくるのかな…。」 ちさと「多分、そうだと思うよ。この廃墟には、とんでもないのが出てくるんだから…。」 2人は歩き続け、みゆきちゃんたちの元へと戻る。次の瞬間、幽霊が突然現れ、そして消えた。 みゆき「どうだった?」 ちさと「出たんだよ!小さなナースキャップをかぶっていた女の幽霊が!」 あい「確かに…見たことがありましたが…。」 百合子「そう…だったのか?」 ちさと「そうだと思いますが…。」 さきみ「それじゃ、今度はあたしの出番だね!」 そして、最後のペアが出発した。最後のペアは、さきみちゃんとさよちゃんであった。2人は4階を探索した。 さよ「何だか、怖そうな感じがしますね…。」 さきみ「でも…ここで幽霊に遭遇したらどうしよう…。」 さよ「そんなことないって…。」 さきみ「それもそうだね…。」 2人は再び歩き続けた。だが…その背後には幽霊がいることを知らなかった…。 そしてさきみちゃんとさよちゃんは、ようやくみゆきちゃんたちの元へ帰ってきた。 百合子「お疲れさん。」 リョウ「大丈夫だった?」 さよ「まあね…。」 さきみ「で…みゆきちゃん、この廃墟で何かあったの?」 みゆき「さっきも話しましたが、20年前の事件以来、この病院では2年おきに、何らかの形で関わった人間が何らかの被害にあうという恐ろしい事件が起こっているため、彼の怨霊が病院を彷徨っているという噂が流れたそうです…。さらにこの話には続きがありまして…。」 昌平「なっ、何だってーっ!!」 みゆき「9年目になると、今度は4人…その次は2人と被害者は増えていくそうです…。」 リョウ「そ…そんな事が…!」 あい「いやああああああああああ――――っ!!」 みゆき「さすがの解体業者の人々も恐れをなし、7年前には工事そのものが断念されました…。」 (さきみ「そうか…。そんな事があったんだね。ここはマジカルステージの出番だね!」) 昌平「そんな廃墟に俺たちを呼び出したのかよ!」 みゆき「ええ。これくらい呪われた場所でないとつまらなかったので。」 みゆきちゃんは笑顔で答えた。 しかし、その笑顔はどこか陰のある笑顔であった。そして…。 さきみ「ちょっとトイレ!」 さよ「あたしも!」 さきみちゃんとさよちゃんはそう言いながら、廃墟の屋上へと向かった。 屋上に上がったさきみちゃんとさよちゃんはおジャ魔女に変身し、魔法を使う準備を始めた。 さきみ「リリット・ピルール・やわらかに〜!」 さよ「ピラリナ・サイラノ・ひややかに〜!」 さきみちゃんのプラズマポロンの先端部分とさよちゃんのハイブリッドプラズマポロンの先端部分がクロスする! さきみ、さよ「マジカルステージ!幽霊よ、ここにやって来て!」 さきみちゃんのプラズマポロンの先端部分とさよちゃんのハイブリッドプラズマポロンの先端部分が光った。光は屋敷全体を包み込み、やがて光が消えた。そして2人の前に幽霊が現れた。幽霊はおかっぱ頭に和服姿、典型的なお化けかと思いきや、そのおかっぱ頭に小さなナースキャップがかぶってあった。 さきみ「幽霊さん、どうしてここに住み着いたんですか?」 幽霊「…あたしは、この病院が出来た頃から、ここに住み着いていたの。」 さよ「そうだったのか…。」 幽霊「みんなにはあたしは見えなくても、病気で苦しんでた人々が治って笑顔で帰っていく…、そんな光景を見るのが好きだったの…。でも、ずっと続くと思ってたその幸せはすぐに崩れてしまった。その時以来、人がいなくなって寂しかったの…。」 さきみ「そうか…それでこの廃墟に住み着いたってことね。」 さよ「もうこの廃墟に住まない方がいいよ。住むんだったら、どこかの墓場に住んだ方がいいと思うよ。」 幽霊「さよちゃん、ありがとう…。これからはあなたの言う通り、墓場に住みたいと思います。それでは…。」 幽霊は笑顔でお礼を言うと、どこかへと飛んでいった。こうして人騒がせな夏の夜の珍事件は幕を閉じたのであった。 さきみちゃんとさよちゃんは変身を解いた後、再びみゆきちゃんたちの元へ戻ったのであった。 みゆき「幽霊、墓場に帰ったんですね…。」 さきみ「そうなんだよ。幽霊は墓場に住んだほうがいいと思って…。」 ちさと「そんなことがあったんだね…。」 さよ「今ごろ、幽霊は何をしているのだろうか…。」 リョウ「道に迷ったりして…。」 昌平「それはともかく、これでこの廃墟も脅えることはなくなったんだね。」 あい「まあね…。」 百合子「それじゃ、今日はこれで解散ということにしましょう。」 一同「は――い。」 全員は廃墟を後にし、それぞれの家路についた。 幽霊「これからは墓場に……あら…?」 幽霊は、わずかに灯りがついている家を見つけた。 くにこ「これで何とか、レベルが30になったぜ。」 わずかに灯りがついている家では、あの南郷くにこがオンラインゲームに熱中していた。 くにこ「このレベルになったら、お化けなんか怖くはないぜ!そろそろ、本気を出してみせるぞ……ん?」 幽霊「こんばんは…お姉さん、あたしとお友達にならない……?」 くにこ「ぐわあああ――っ!!でっ…出たあああああああ――――っ!!!!」 …その後、くにこちゃんは5日間近く寝込んでしまったという。 幽霊「墓場に住むって…結構大変だね……。」 幽霊の墓場暮らしは、これからが本番である……。 つづく 次回予告 なんと、さよちゃんとさよちゃんの妖精・ササがケンカをしてしまった。 そしてササはさよちゃんの家に居づらくなり、さきみちゃんの家に来てしまった。 だがササはこの後、とんでもない災難に遭ってしまう。 果たしてササは、さよちゃんと仲直りが出来るのか!? おジャ魔女さきみ・第30話 「ケンカをしてしまったさよちゃんとササ」 君は、刻の涙を見る…。 |