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大野事件シンポ「医師と患者、不安の共有を」

 「お医者さんが一人で孤独に向き合っているのと同じぐらいの不安を、患者も感じている。この不安を共有していくことができれば」。福島市内で8月20日に開かれた「福島大野事件が地域産科医療にもたらした影響を考える」シンポジウムで、一人の地域住民がこう発言した。「福島県立大野病院事件」などの医療刑事裁判の影響で、患者と医療者の溝が深まったとの指摘もある中、医療者と患者の関係についてのやり取りを紹介する。

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 医師や弁護士、市民団体代表など各パネリストによる問題提起が終わった後、会場にいる参加者を交えてのフリーディスカッションが行われた。国会議員からは無罪判決に対する安堵の感想、医師からは社会保障費の財源不足に対する指摘などがあった。

 続いて司会の上昌広氏(東大東大医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門特任准教授)が、次のように問題提起した。
 「二つの医療崩壊がある。一つは福島県内で産科が多数閉院したことによる医療崩壊。二つ目は、患者と医師との対立関係で、患者と医師の本来の協働関係が崩壊している。この二つの立て直しを、いかにするか議論しなければいけない。今回は、『県立柏原病院の小児科を守る会』の仕掛け人の足立智和記者が来ている。地域医療再生のモデルケースだが、福島をどうすればいいか、ご意見をもらえないか」

■一緒に医療をつくるというムードを
 丹波新聞の足立記者は、『守る会』で製作して配っているうちわを手に、発言した。
 「片面には『子どもを守ろう お医者さんを守ろう』、もう片面には『地域医療を守るのは一人ひとりの心がけ』と書いてある。『守る会』の運動は、『私たちの大事な子どもを見てくれるお医者さんを大事にしなければ、誰が子どもを見てくれるんだ』ということ。まずお医者さんがいないと自分たちの子どもを守れないし、安心して地域で暮らせない、という発想に立っている。
 基本的に患者と医療者は対立するのではなく、もともと医療者は患者を治したいと思うし、患者は治りたいと思う。医療者にはその『治したい』というメッセージをもっと発してもらい、患者はそれに寄り添っていくという、一緒に医療をつくっていくという雰囲気やムードを国全体に広げていけたらと思う。先日、舛添要一厚生労働相と『守る会』が会談したが、大臣も言っていたように、国民運動でやっていくしかない。『守る会』のような『住民が医療を支えよう』というイメージを持っている地域でなければ、日本の医療は再生できないところまで来ていると思う。そういう視点でも、幼稚に見えるかもしれないけど、こういうところから始めていくしかないのでは」

 これに続き、会場の医師が発言した。
 「丹波の成功は、お母さん、つまり患者さんが『医療の不確実性』を理解したことが大きい。今回の無罪判決に関するインターネットの掲示板などのやり取りを見ていると、いまだに『患者が死亡して逮捕された以上、医師に何らかの過失があったのだろう』と思っている人が多い。つまり『医療の不確実性』がまだ理解されていない。これをいかに一般市民の方に理解していただくかが大きな問題」

■患者を主体に医療をとらえ直す
 この発言について、上氏はパネリストの川口恭氏(ロハスメディア代表取締役)の発言を求めた。
 「『医療の不確実性』は多分、医療者側の視点。『医療を使う以上、絶対治る』というところからスタートするからおかしい。患者が主体になって医療をとらえ直すことが必要で、『自分ではどうにもならない。ほっといたら死んでしまうが、医療を使ったらひょっとしたら助かるかもしれない』と、(医療に対する)期待値を下げるというか、発想の転換が必要。だが、これは医療者の方から言っても伝わらないと思う。患者さんからその動きが出ないといけない。そのために、何にいくら使う、どういうとこにお金が必要か、ということを国民に見せていただかないと国民も納得しない。そうやって示していただければ、国民も理解できるのではないかと思っている」

■患者も同じ不安を抱いている
 これを受けて、会場の後方から発言があった。
 「地元の高校の教員だ。われわれはそんなに馬鹿じゃないということも分かっていただかないと困る。『医療の不確実性』を分かっていない日本人がそんなにいるわけじゃない。ただ、うまくいかない医療があった時に、それをどこに持っていったらいいのか。どうしたら納得できるのか、そういう孤独の中に患者が陥っているところがあると思う。お医者さんがこの(大野病院)事件で大きな不安を抱いて一人で孤独に向き合っている恐怖と、同じ弱さで、患者も不安や恐怖に陥っている。その時に情報を発信できるのは、お医者さんの側だと思う。われわれは無知なのではない。状況が何が何だか分からないままだと不安に陥ってしまうということ。その状況への説明があってほしいが、情報だけいっぱいあっても分からないので、こういうガイドラインがあるとか(教えてもらうと)、状況の不安を共有できる可能性はあると思う。
 (刑法などの)法律を変えて(医師を)守ろうという不安も、すごくよく分かる。われわれと不安を共有して、住民が主体になって、医療の方と協力するという流れができていくと素晴らしい。川口さんの意見に賛成する」

 この発言を受け、上氏は、産後のうつやマタニティブルーなどの悩みを持つ女性の声を聞いてきた、パネリストの宮崎弘美氏(「ママブルーネットワーク」代表)の発言を促した。
 「患者側の情報の不足をすごく感じる。お医者様たちにとっては普通で、常識であっても、私たち医療を受ける側には常識でなくて、分からないことが多過ぎる。私たち『ママブルー』も、お医者様の方から近寄ってほしいと言われれば、努力もしてきた。だが、どこまで近づけば、上っていけばいいのか―。努力不足で、もっとしっかりしなさいと言われることもあるが、こちらも一生懸命に近づこうと努力している。ぜひ医療関係者の皆様と、私たちの苦しみや悩みについて手を携えてやっていきたいとものすごく思っているし、努力も惜しまない。『手を差し伸べていただきたい』と常に思っていると、ここで伝えたい。(患者や妊婦が)『説明していただきたい』と言うのも、『(医療者に)近づきたい』と思うため。(医療者と)気持ちが離れてしまった時にはがっかりしたりする。そういうコミュニケーション不足がある」

■患者も医療者も余裕がないのが現実
 次に、上氏は「産婦人科のリーダー」として海野信也氏(北里大医学部産婦人科教授)の発言を求めた。
 「情報の非対称性は、どの専門分野でも存在せざるを得ない。現場はそれを前提に、緩和する努力をしないといけないが、その余裕がまったく与えられてない。そういう環境に、患者も医療現場のスタッフもいるのが現実。現場の人間が努力する仕組みづくりが必要だが、それとともに全体のシステムとして、余裕のある人間らしい環境で仕事し、治療し、治療継続するという環境が日本の医療に必要。
 産婦人科の医師不足は『大野病院事件』が起こる前から危惧(きぐ)していたが、事件後に医師不足の問題を皆さんに分かってもらえるようになった。もし有罪になったら加藤先生をただ犠牲にしていることになると思い、本当に心配していた。日本産婦人科医会や日本産科婦人科学会、日本医師会、臨床系の学会なども同じ気持ちで進んできて、ぶれることはなかった。多くの方にこの現状を分かってもらえると信じることができる経験だった。医療崩壊再建の出発点をそこにして、皆で理解し合いながら進んでいくしかない」


更新:2008/08/21 20:19   キャリアブレイン


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