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2008年8月17日 (日)

マクドゥーガル報告書分析

私は最近mixiで反日左翼君達とよく論争をしているのですが、アメリカ下院の対日非難決議以降、反日左翼諸氏の多くの論拠は「慰安婦制度=性奴隷制」である、という事のようです。
そしてその多くは、1998年に国連人権小委員会の特別報告として出された、ゲイ・マクドゥーガル氏の「第二次世界大戦中に設置された「慰安所」に対する日本政府の法的責任の分析」にその論拠を発しているようです。
mixi上で討論していた内容の引き写しですが、この通称「マクドゥーガル報告書」について分析してみます。

1.はじめに
1932年から第二次世界大戦の終わりまでの間、日本国政府及び日本帝国軍隊は200,000人を超える女性をアジア全体に存在した強姦所において強制的に性的奴隷とした。これら強姦所は、問題があるほど娩曲的な言い方で「慰安所」という言葉でしばしば言及されている。

20万人とは、推定数でしかないものを断定的に書いてますね。

学者さんの推定を以下に述べます。
・千田夏光(作家):8.4万
・金一勉:20万
・秦郁彦:6万-9万
・吉見義明:5~20万
・板倉由明:3万(終戦時2万)
・上杉千年:4万-6万(終戦時2万-3万)

・林博史(数万~十数万)
・高木健一(弁護士):10万~20万
・鄭鎮星:8万-20万
・尹貞玉:30万-40万
・蘇智良:40万
・G・ヒックス:13.9万
・C.S、ソー:7万-20万
(慰安婦と戦場の性 P405の表より)

もし二十万人も慰安婦がいたらどうなっていたかについて秦郁彦さんが試算を試みておられます。
すなわち、二十万人の慰安婦が毎日二十人に接客すると、全軍で四百万回、五万人としても百万回となり、全兵力三百万人が戦争もせずに毎日1.3回か、三日に一回の割で慰安所通いをせねばならぬバカバカしい話になってしまう。(慰安婦と戦場の性 P404)

二十万人というのがいかに荒唐無稽な人数なのかわかりますね。

これら「慰安婦」の大多数は朝鮮(半島)出身者だったが、中国、インドネシア、比、その他日本の支配下にあったアジア諸国からの者も多かった。過去10年に亘り、この残虐行為の生存者の多くの女性が名乗りを上げ、これら罪に対する賠償を求めた。本付属文書は、第二次世界大戦中の強姦所の設置、監督、管理における旧日本軍の関与に関し、日本国政府自身が行った調査により判明した事実のみに依拠するものである。これら日本国政府の認識を基礎として、本付属文書は、第二次世界大戦中の「慰安所」における女性の奴隷化及び強姦に対する日本国政府の現在の法的責任について評価を試みるものである。責任については各種の根拠が有り得るが、本件報告書は、最も重大な国際犯罪である奴隷制、人道に対する罪及び戦争犯罪に対する責任に特に焦点を当てている。また、本付属文書は、国際刑事法の下での法的枠組みを設定すると共に、生存者が行い得る賠償請求につき検討を行う。

大多数と言うからには少なくとも8割~9割でしょうね。
また学者さんの推定を以下に
・千田夏光:6.5万/8.4万が朝鮮人
・金一勉:80-90%が朝鮮人
・秦郁彦:日本人4に対して朝鮮人は2
・吉見義明:最多は朝鮮人
・鄭鎮星:絶対多数は朝鮮人
・尹貞玉:10万-20万が朝鮮人
・蘇智良:日本人10万、朝鮮人20万、中国人10万以上
・C.S、ソー:80%は朝鮮人
(慰安婦と戦場の性 P405の表より)

参考として吉見教授が、性病に罹患した際「誰に移されたか」を記録した文書を発見して考察に供しておられますね。

・「朝鮮女」51.8%
・「支那女」36.0%
・「日本女」12.2%
(従軍慰安婦 P82)

半数程度かなと言える根拠はあるものの、8~9割と言うには無理がありますね。
人数、割合の双方が一致するということでマクドゥーガル氏は金一勉氏の著書を参考にしている可能性が高いと思われますが、【日本国政府自身が行った調査により判明した事実のみに依拠するものである。】と声高々に宣言されていますね。
日本国政府がどこでどうやってこんなデタラメな人数報告、割合報告をしてるのかマクドゥーガル氏に聞いてみたいものです。

まあこの人、wikipediaの記事によれば
吉見義明からも学術的姿勢に欠陥を指摘されている。吉見義明はマクドゥーガルが政府調査に基づくと報告した中で実際に政府資料にない箇所を本人を前に指摘したが、マクドゥーガルは無視したという。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%AB%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8

ということですからさもありなんですね。(笑)

I. 日本国政府の見解
2.日本国政府は、第二次世界大戦中に強姦所の設置及び監督に旧日本軍が直接関与していたことを多年に亘り否定していた後に、最終的には、日本国政府自体の「慰安所」の設置への関与につき、「内閣外政審議室による1993年8月4日発表のいわゆる従軍慰安婦問題に関する調査結果及び同日の内閣官房長官談話」においてこれを認めた。同調査は、戦時公文書の調査、並びに元軍人及び元r慰安婦」の双方への聞き取り調査を含んでいる。本付属文書において論議している通り、1993年の調査は「慰安婦」の個人的及び性的自主性の欠如及び女性の健康をあたかも奴隷のように管理していたことを強調している


一般に「政府が関与を否定した」と言われているのは1990年6月の清水伝雄労働省職業安定局長の「やはり民間の業者がそうした方々を軍と共に連れて歩いているとか、そういうふうな状況のようでございまして」という発言が取りざたされているわけですが、それから3年2か月後に「河野談話」が発表されているわけです。
マクドゥーガルさんの解釈では、3年2か月が「多年」になるらしいですね。ちと急ぎすぎなのか他の意図があるのやら(笑)

清水局長の発言についてもう一つ言っておくと、速記録には
従軍慰安婦なるものにつきまして、古い人の話等も総合して聞きますと、やはり民間の業者がそうした方々を軍と共に連れて歩いているとか、そういうふうな状況のようでございまして、こうした実態について私どもとして調査して結果を出すことは、率直に申し上げてできかねると思っております。
http://daikichi1966.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/5_15b1.html

と答弁されているのですが、この「私ども(=労働省=厚生省)として調査して結果を出すことはできかねる」という言葉を次の12月18日の質疑では「軍、国家と関係なく」という事にすり替えられているのも注目したいですね。
清水局長は厚生省の役人としての立場から「私どもは関係ない」と答弁したのです。
これについて「国も軍も関係ない」と微妙なすり替えがなされた、というのは知っておかねばなりませんね。

2.~6.省略
■ II. 強姦所の性格及び規模
7.日本国政府及び軍が第二次世界大戦中にアジア全般における強姦所の設置に直接関与していたことは今日明らかになっている。これら強姦所で旧日本軍により奴隷化された、多くは11歳から20歳であった女性は、日本支配下のアジア全体の各地に住まわされ、毎日、数回に亘り強制的に強姦され、身体的虐待の対象となり、また性病に犯された。

吉見教授からも批判されている部分ですね。
4.年齢が11歳からという資料はない。公文書では14歳がもっとも若い。21歳未満が半分を超えるということはいえる
http://www.zephyr.dti.ne.jp/~kj8899/hosho.html#ゲイ・マクドゥーガル
こんな事実認識からめちゃくちゃな文章を鬼の首取ったように言っている人達って何でしょうかねw

これら女性の約25%のみがこの毎日の虐待から生きのびたと言われている(6)。これら「慰安婦」を得るために、旧日本軍は身体的暴力、誘拐、強要及び欺聴を用いた。

これもむちゃくちゃですね。
上URLから
.生還が25パーセントという根拠となる資料はない。
とあります。


生還率については秦教授の論考が参考になるでしょう。
ついでに慰安婦の損耗率は計算のしようもないが、日赤従軍看護婦の損耗率4.2%が参考になろう。「20万人の朝鮮人女性を慰安婦に強制徴集して虐待、ほとんどを殺害」(クマラスワミ報告書における北朝鮮政府の申立て)とか、「朝鮮人慰安婦20万人のうち15-18万人は死亡と推定」(93年5月、IEDのカレン・パーカー報告書)とか、「朝鮮人慰安婦200名を潜水艦に乗せ機雷にぶつかるように仕組み、沈没させて殺した」(91年5月、尹貞玉の東京公講演)たぐいの非常識な浮説が流布されているが、私は慰安婦の九割以上が生還したと推定している。(慰安婦と戦場の性 P406)

マクドゥーガル報告書は北朝鮮の報告書並って事ですね。

8 政府および非政府組織による準備調査によって、「慰安所」として以下のカデゴリーがあることが明らかにされた。
(1)日本軍が直接管理運営していたもの
(2)公式的には民間業者が運営していたが、実質上は軍の管理下にあり、軍人と軍の民間人雇用者のみが利用していた所
(3)民間運営の慰安所で、軍人が優遇されたが、日本の民間人も利用できた所
もっとも多かったのは二番目の慰安所だったと思われる。
こうした行為に日本軍が関与したことについて日本政府は「道徳的責任」は認めたものの、あくまでも法的責任はいっさい否定している。

慰安所の分類が書かれています。
吉見教授の分類がこれに近いですね。

第一のタイプは、軍直営の慰安所である。
第二のタイプは軍が監督統制する軍(軍人・軍属)専用の慰安所である。(略)
第三のタイプは、一定時期、軍が民間の売春宿などを兵員用に指定する軍利用の慰安所で、軍に特別の便宜を図るが、民間人も利用するものである。
(従軍慰安婦資料集 吉見義明編 P27~28)

マ報告書もおそらくこの資料集の文章を参考にしたものと思われます。

しかし吉見資料集にはこのあと
第四が純粋に民間の売春宿で、軍人がそこへ通ったとしても軍とは関係ないものである
とありますね。
マ女史がこれを意図的に省いたのかは定かではありません。
しかし吉見教授にせよクマラスワミ報告にせよ戦争責任資料センターにせよ、都合のいい引用、都合のよい解釈をこれまで続けてきた実績を自分はこれまで何度も確認してきました。
同じ愚を犯さぬよう留意するとともにマ報告書が同様の類であることを証明することは意義のあることでしょう。


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