遺族、再発防止求める 大野病院事件判決福島県立大野病院(福島県大熊町)で、帝王切開手術中の女性=当時(29)=が失血死した事件をめぐる裁判は、福島地裁で20日、執刀した医師に無罪判決が言い渡されたが、医療の現場や行政に対し、現制度や体制に変革を迫る結果となった。「医療界として患者に真実を説明する体制を整えてほしい。医療界が人の命のために(手術スタッフ)全員の意見がそろった手術をしていってほしい」。女性の父親で福島県楢葉町の会社員渡辺好男さん(58)は、判決公判終了後の記者会見で、現在の医療界への不満を語った。 渡辺さんは同日、県病院局を訪れ、再発防止を求める要望書を尾形幹男局長に手渡した。要望書は(1)医師の計画的な配置(2)ビデオ記録の保存(3)周産期医療システムの検証と見直し―など8項目で、病院に「1人医長」を生まないことや手術の危険を徹底して説明することなどを求めた。 尾形局長は「関係部局などと十分協議させてもらう」と答えた。 県自治会館で記者会見した茂田士郎・県病院事業管理者は「病院としては誠意を尽くして遺族に説明したつもりだったが、十分に心に届かなかった点もあったかもしれない」と反省点を示した。 福島県医師会の小山菊雄会長は、福島市の県医師会館で記者会見し「安心して医療行為ができる判断に安堵(あんど)している」と判決を評価。 その上で「患者や遺族の気持ちを酌むためにも、県医師会として、診療行為で患者が死亡した場合に原因を究明する医療安全調査委員会(仮称)の早期開設を求めていきたい」と語った。 佐藤雄平知事は「県民が安心して暮らせる社会づくりのため、地域医療を確保することは重要。今後も医療体制の整備と医療の安全確保に努めていきたい」とコメントした。
2008年08月21日木曜日
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