福島県立大野病院の医療事故で業務上過失致死罪などに問われ、20日に福島地裁で無罪判決を受けた産婦人科医の加藤克彦被告(40)=休職中=は同日午後、弁護団とともに福島市内で記者会見し、「最悪の結果になり本当に申し訳ない」と亡くなった女性や遺族に謝罪。今後は「地域医療の現場で患者さんにできることを精いっぱいやりたい」と語った。捜査当局には「僕みたいな立場の人をつくらないでほしい」と述べた。(3面にクローズアップ、25面に判決要旨)
主任弁護人の平岩敬一弁護士は「弁護側主張を標準医療と認めた」と判決を評価。異状死の警察署への届け出を定める医師法21条に関して「診療を受けている疾病によって死亡した場合、要件を欠く」と判断したことについても「かなり踏み込んでおり、今後の解釈に大きな影響を与える」とした。
女性の父渡辺好男さん(58)は県庁で会見し「父として残念。今後の医療界に不安を感じざるをえない」と述べた。福島地検の村上満男次席検事は控訴について「上級庁と協議のうえ適切に対処したい」と話した。【松本惇、西嶋正法、今井美津子】
何をもって医師の過失とするのか判断が非常に難しい。そもそも刑法犯罪としてなじむのか。判決で参考にできるところは参考にし、(死因究明の第三者委員会である医療安全調査委員会の設置法案を)来るべき臨時国会できちんとコンセンサスを得てまとめたい。委員会だけでなく、(医師の過失が立証できなくても補償金が受けられる)無過失補償制度など、いろんな施策を組み合わせて、医療体制全体を再構築することが重要だ。
妥当な判決で、医療事故の原因究明は専門家で行うべきだ。今後も同じように不幸な事件が起きてもおかしくない。厚生労働省による第三者機関「医療安全調査委員会」の設置を支援していきたい。患者と真摯(しんし)に向き合い、溝を埋める努力をしていく。
加藤医師は減給1カ月処分も受けており、刑事責任は別にしても医療行為が適切だったとは言えない。県が事故調査報告を作成する際に遺族から聞き取りをしないなど、遺族対応も不十分だった。今回の事故を全面的に正当化してしまうと、重大な事故隠しなどにつながりかねず、関係者は反省すべき点は反省してほしい。
毎日新聞 2008年8月21日 東京朝刊