カロリー換算の食料自給率は、一年で40%に回復した。十三年ぶりの上昇傾向を持続させるには、主食のコメが鍵になる。「食育」と「用途拡大」を両輪に、コメ復権を戦略的に進めたい。
日本の食料自給率は二〇〇六年度、40%を割り込んだ。冷夏に見舞われ、「平成大凶作」と呼ばれる一九九三年度以来の低水準と言われたが、一年で回復した。
農林水産省はその理由として、小麦が豊作だったこと、コメの消費量が増えたこと、砂糖の生産量が増えたことなどを挙げた。
自給率は計算上、小数点以下が四捨五入されている。正確には〇六年度に39・3%に落ち込んだ自給率が、〇七年度は39・8%と、0・5ポイント回復しただけだ。
小麦の品種改良は進んでいるとはいうものの、その増産は、好天に負うところが多く、これで「39%ショック」が解消されたとは言い難い。雲行き一つですぐに暗転しかねない危うさを秘めている。
しかし、自給率向上へのヒントは、ほのかに見えてきた。鍵を握るのは、やはり主食のコメだ。小麦の世界的な高騰で、パンやめん類が値上がりし、コメに割安感を感じた消費者が、米食に回帰した。コメの一人当たり年間消費量が、〇・四キロ増えた。ほぼ半世紀ぶりのことである。
自給率が〇六年度四割を切ったのも、コメ消費の減退が要因の一つとされた。
人口増や天候不良、バイオ燃料増産などで、世界が慢性的な穀物不足に陥る中、消費者の目はコメに向いている。この関心を一過性のものにしてはならない。
一九六〇年代、米国型食生活の広がりとともに、自給率の急降下は始まった。パンと肉は豊かさの象徴だった。ところが今や、健康と長寿の糧として、日本食が世界の注目を浴びている。その良さを見直すための「食育」を広げるチャンスである。
外資系の有名コーヒーチェーンや大手コンビニが、米粉パン類の本格的な販売に乗り出すなど、コメの用途も広がっている。米粉で作っためん類も改良が進み、小麦のめんに近づいてきた。単なる「ご飯回帰」だけではない。
政府は、自給率50%を目指す工程表を年内にも策定する計画だ。
「食育」の充実とコメの用途開発、普及を重点に、野心的な生産者を育てつつ、新たな食文化の創造に挑むつもりで取り組んでもらいたい。
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