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【主張】産科医無罪判決 医療を萎縮させぬ捜査を

2008.8.21 02:48
このニュースのトピックス主張

 産婦人科医が逮捕された大野病院事件で、福島地裁は「医師の判断と処置に過失はない」と無罪判決を言い渡した。医療のリスクに理解を示した判決である。

 事件は医療のさまざまな問題を投げかけた。捜査当局や厚生労働省、医療関係者は問題解決の努力を怠ってはならない。

 手術中に死亡した妊婦は、胎盤が子宮口をふさぐ前置胎盤のうえに胎盤がはがれない癒着胎盤だった。珍しい症例で治療も難しかった。医師は帝王切開で子供を取り出した後、癒着した胎盤をはがしたが、大量出血を起こした。福島県警は医療過誤を認める県の調査報告を手掛かりに業務上過失致死と医師法(異状死の届け出義務)違反容疑で医師を逮捕した。

 しかし、判決は検察側の立証を認めず、剥離(はくり)を続けた医師の行為を「標準的」と判断した。

 大野病院事件はカルテの改竄(かいざん)や技量もないのに高度な医療を施した医療過誤事件とは違った。それでも警察の捜査は医師の裁量にまで踏み込んで過失責任の罪を問うた。当然、医療界は「最善を尽くして逮捕されるならもう手術はできない」と反発し、産科医離れに拍車をかけた。

 医療を萎縮(いしゅく)させないために、捜査当局は幅広く専門家の意見を聞くなどもっと慎重に対応すべきだった。逮捕せずに書類送検で在宅起訴して刑事立件する捜査手法もあったはずだ。ただ、今後、医療過誤に対する捜査も萎縮するような事態は避けたい。

 手術には医師の予測を超える事態も起こり、大なり小なり危険は付きものである。だからといって救命の手は緩めてはならない。医療は患者のためにある。治療の前に患者側にインフォームドコンセント(説明と同意)を十分行い、難しい局面を経験と知識で乗り切って患者の命を救おうと努めるのが医師の使命だろう。

 判決は「警察への届け出義務はなかった」とも判断した。医師法は病死と断定できず、異状があると認められたときは警察に届け出るよう医師に義務付けている。だが、異状死に明確な定義がない。これも法律整備が求められる。

 今回の判決は創設が検討されている「医療安全調査委員会」制度にも大きな影響を与えるだろうが、この制度は事故原因を究明し、真に再発防止を目指す組織でなければ意味がない。

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