最終更新: 2008/08/21 01:49

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福島・帝王切開手術女性死亡事件 「標準的な医療措置」と産婦人科医に無罪判決

帝王切開の手術で妊婦が死亡した責任を問われて現役の産婦人科医が逮捕され、全国的に議論となった事件で、福島地裁は20日、無罪判決を言い渡した。
逮捕されて2年6カ月、自宅で謹慎生活を続けている産婦人科医・加藤克彦被告(40)は、裁判所に入る前に大きく息を吐いた。
2004年12月、福島県立大野病院で、当時29歳の女性が加藤被告の帝王切開手術で出産したが、女性は子宮から胎盤がはがれない、癒着胎盤という出血しやすいハイリスクな状態だった。
加藤被告は、胎盤をはがす処置を行ったが、女性は大量出血を起こして死亡し、福島県警は2006年2月、加藤被告を業務上過失致死と医師法違反の疑いで逮捕した。
これに、学会や医師たちは強く反発した。
日本産科婦人科学会は2006年、「献身的に、過重な負担に耐えてきた医師個人の責任を追及するには、そぐわない部分があります」と述べていた。
そして、福島地裁は20日、加藤被告に対して無罪の判決を言い渡した。
福島地裁は、加藤被告による胎盤のはく離によって出血性ショックが起こり、女性が死亡したと認定した。
しかし、すぐに子宮摘出を行うべきだったとする検察の主張を退け、「過失なき診療行為をもっても、避けられなかった結果」として、加藤被告に無罪を言い渡した。
加藤被告は「地域医療の現場において、患者さんにできることをわたしなりに、精いっぱいやっていきたいと思っております」と話し、医療現場に復帰する意向を示した。
一方、亡くなった女性の父親・渡辺好男さんは「本日の判決は、被害者の父としては残念な結果と受け止めるとともに、今後も医療界に不安を感じざるを得ません」と話した。
今回の判決を聞いた出産経験者は、複雑な反応を見せた。
帝王切開で出産した女性は「わたしも、帝王切開で産んでるので。手術っていうのは、やっぱり2度目も、ちょっと不安で怖かったですね」と話した。
出産経験者は「やっぱり命を扱う仕事なんで、それなりに責任はどうしてもついてくるものだとも思うんで。逆に、自分がそのお母さんの立場であったなら、許せないと思います」と話した。
主にハイリスクな出産を受け入れている、昭和大学付属病院総合母子周産期医療センター。
研修医の勝井 真理子さん(20)は、産婦人科の魅力について「新しい命が生まれる瞬間に立ち会えるっていうのは、すばらしいことだと思います」と語った。
2009年3月までに、勝井さんは専門を決めなければならないが、今回の事件によって迷いが出ているという。
勝井さんは「自分の人生も1回しかないんで。そうですね、逮捕されたりとか、そういうのはちょっと避けたいと思います。今現在は、ちょっと(産婦人科を)選択できないかなと思います」と話した。
医療の進歩の一方、高齢出産の増加など、出産のリスクは変わらずに存在している。
産婦人科医として35年のキャリアを持つ昭和大学産婦人科の岡井 崇教授は、医療事故に司法が介入する弊害を指摘する。
岡井教授は「患者さんを救おうと思ってやったことで、うまくいかないからという結果でね、それで刑事罰、刑罰を与えられるということになると、その一生懸命患者さんのために尽くそうという気持ちがね、これはなえちゃうんですよね」と話した。
厚労省は、医療版の事故調査委員会を検討していて、舛添厚労相は、次の臨時国会で法案を提出する考えを示した。
舛添厚労相は「産科医の先生方の立場も、よく今まで何度も聞いてますし。しかしやっぱり、一方で国民の医療に対する不信ていうのもあります」と話した。
今回の事件について福島県は、独自に調査委員会を設置し、加藤被告と病院側にミスがあったとする報告書をまとめていた。
危機的な産科医不足を変えなければ、出産をめぐる事故は続くと、東京医科歯科大学の川渕孝一教授(医療経済学)は警告する。
川渕教授は「1人しか産科医がいない病院というのはね、全国の病院のうちの47%。つまり、半分ぐらいが1人しか産科医がいないんですよね。そういう薄氷を踏むような感じの産科医療体制がある」と話した。

(08/20 23:58 福島テレビ)


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