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【医療と刑事捜査】(上)対峙するエリート (1/3ページ)
このニュースのトピックス:刑事裁判
「医療側からみて理解不能な刑事訴追の典型が大野病院事件だ。検察官は能力はあるが、使う方向が間違っている」
業務上過失致死罪に問われた福島県立大野病院の産科医、加藤克彦被告(40)に対する判決を控えた7月28日。日本医学会が東京都内で開いた「診療関連死」に関するシンポジウムで、日本救急医学会の堤晴彦理事が捜査や公判への不信をまくし立てると、会場から大きな拍手が起こった。
実際、そう考えている医師は多い。加藤医師の逮捕以来、捜査に抗議する声明などを出した医療系団体は約100を数える。
日本産科婦人科学会の岡井崇理事は「今回のケースは癒着胎盤という珍しい症例で、最善の手術方法がまだ確立していない。これで刑事罰が問われるのであれば今後、難しい外科手術はできなくなる」と指摘。「過去に立件されたカルテ改竄(かいざん)や医療過誤とは質が異なる」と主張する。
一方で検察側が捜査に万全の自信を持っていたことはいうまでもない。裁判では「手術の際の注意事項は基礎的文献に書かれている。産婦人科医師としての基本的注意義務に著しく違反する過失を起こした」と弁護側の主張に反論した。
「過去に起きたカルテ改竄事件に象徴されるように、医療現場には仲間でかばい合ってミスを隠そうとする体質があったことを忘れてもらっては困る」「私たちは患者目線で捜査しているんだ」…。公然と捜査を批判する医療界に対して、敵意をむき出しにする検察官も少なくない。