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福島県立大野病院事件

「ミスはしていない」加藤医師が心境を語る

福島県立大野病院事件、初公判後に会見

軸丸 靖子(2007-01-27 19:05)
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 福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた女性患者が亡くなり、執刀医が逮捕された事件で、医療界に激震が走ってから約1年。

 26日福島地裁で開かれた初公判で、初めて報道陣の前に姿を見せた医師の加藤克彦被告(休職中)は、罪状認否で「できる限りのことをやった」と無罪を主張。公判後は記者会見にも出席し、「1年の時間がたって気持ちの整理がつき、また周囲の状況も理解できるようになって、ご支援下さっている医療従事者の方々に元気でいることを見せたいと思った。自信を持って頑張ろうと思っている」と話した。

会見終了後、立ち上がって「亡くなられた患者さんのご冥福を心よりお祈りします」と頭を下げる加藤克彦被告(26日夜、福島市の福島市民会館)(撮影:軸丸靖子)
 逮捕から1年近く沈黙を守ってきた理由は、「僕も僕なりに落ち込んでいて、人前で話をする踏ん切りが付かなかった」ため。「言いたいことをきちんと話せるか疑問だったし、変に受け止められるとご遺族がまた傷つくこともあるだろうと考えた」という。

 2006年2月の逮捕当時は、「見せしめのように、外来診療中に突然、逮捕された」などのうわさがメーリングリストなどで流れたが、この点は否定。

 実際は、2、3日前に警察から「今度の土曜に家宅捜査に入るから自宅待機するよう」指示があったため、所属する福島県立医大の産婦人科医局に連絡し、その日に病院で呼び出しがあった場合は近隣の医師に応援に入ってもらえるよう手配していた。

 当日は、朝から2時間ほどの捜索のあと警察へ同行するよう言われ、車に乗って取調室に入ったところで、逮捕状が読み上げられた。「警察から連絡があったのは久しぶりだったし、その前にも何度か警察へ行って供述をしていたので、その日に逮捕ということはまったく考えていなかった。驚いて、その場で違うという話はしたが、そのまま拘留されてしまった」という。

 保釈中の現在は診療はできないため、自宅で勉強をしているという。「好きな産婦人科の仕事ができないというもどかしさはあるが、勉強の良い機会という風にポジティブに考えたいと思っている」。

 手術時に、大量出血が始まっても応援医師を呼ばなかったことについては、「(分娩は順調に済んでおり、胎盤剥離に入るまでは)リスクはさほど高くないと考えていたし、実際に出血が始まってからは応援を呼ぶタイミングを逸したということがあった」と述べ、あらためて大量出血リスクの認識はなかったこと、医師としての対応にミスはなかったことを強調した。

 同事件は、産婦人科医らが「その状況では、だれでも同じ対応をとる」と言われるケースで起きており、しかも「胎盤剥離を中止し、子宮摘出に移るべきだった」「剥離に手術用はさみ(クーパー)を用いた」など、現場にいる“医師の裁量”にかかる部分で“刑事”訴追されていることなどから、警察・検察は医師らの猛反発を買った。産婦人科の医師不足が全国的に深刻になっていることもあって、社会的にも注目を集めている。
  
 公判で、検察側と弁護側が真っ向から対立しているのは、「加藤医師が(大量出血の可能性のある)癒着胎盤であることを予見していたか」どうかという点だ。

 検察側は、可能性を認識していたことを前提に、加藤医師の注意義務違反を指摘しているが、弁護側は、再三の術前検査でも、開腹後に直接子宮に超音波を当てた検査の結果でも癒着の診断はついておらず、不可抗力であったことを主張している。 


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