県重要無形文化財の備前焼作家森陶岳さん(71)が築造を進めていた大窯が完成し、瀬戸内市牛窓町長浜の工房で19日、火入れ式が行われた。 大窯は全長約85メートル、幅6メートル、窯内の高さ4メートルと、備前焼の窯としては異例のスケールを持つ。高温に耐えられるように耐火れんがが大量に使用され、壁の厚さも60センチを超える。古備前の大窯の技術解明を目指す森さんが1995年から用地造成を進め、2000年に着工、一門の弟子と共同で築造を進めていた。 式には関係者ら約150人が出席。神事に続いて森さんがまきをくべて火を起こし、完成を祝った。 今後約1カ月間行われる空たきでは、窯の温度を約800度まで上昇させ、温度上昇の推移や必要な燃料量などを確認。その後5年間かけ、11工程に分けて大甕(おおがめ)や茶陶器などを制作し、1200度以上の火で焼く本たきに入る。 念願の大窯の完成を受けて森さんは「これほどの窯は未知の世界。課題を一つずつクリアし、作品作りにつなげたい」と意欲を燃やしていた。