政府・与党は臨時国会の召集時期を九月中旬とするらしい。物価高などで国民生活に厳しさが増し、猶予の置けない課題が山積する折だ。内輪の“きしみ”のせいで先送りするなら、能天気すぎる。
福田康夫首相は六月の通常国会閉幕時に、臨時国会の八月下旬召集を半ば公言していた。だが、八月初めの内閣改造後も決断はずるずると遅れ、十九日の政府・与党連絡会議で出した答えが、日付をぼかした「九月中旬」だった。
臨時国会では、インド洋での給油活動を継続する新テロ対策特別措置法延長、緊急経済対策、消費者庁設置などを目指すという。
「平和協力国家」を旗印にする首相としては、来年一月の特措法期限切れを前に延長するのが基本路線だ。参院野党の抵抗も念頭に、衆院再可決に踏み切るための時間的余裕が必要と、八月下旬召集を意図していた。
ところが年末年始の衆院解散・総選挙を望む公明党は、選挙に不利に働く再可決に難色を示し「九月下旬」を要求した。創価学会を提訴した矢野絢也元公明党委員長の参院招致を野党が検討しているのを懸念し、国会が長引くのを避けようとしているとの説もある。
自民党内にも、総選挙勝利には公明党の支援が不可欠と同調する意見が少なくなかった。内閣支持率低迷を理由に与党の「福田離れ」が進んでいることもあって、召集時期で首相が譲歩を余儀なくされた格好だ。
私たちは速やかに国会を召集し、民意を問うよう求めてきた。
首相がテロとの戦いで国際社会と協調しようというなら、国会で堂々と理解を求めればいい。
「安心実現内閣」というなら、景気後退が現実化する中で家計に明るさを取り戻すための具体策を早急に提示すべきだ。与党には兆単位の大型補正予算編成を求める声が相次いでいる。そんなバラマキを許していいのかも審議の場でオープンに議論したらどうか。
首相の統率力がより低下している。だが、与党内のごたごたは国民には無関係だ。閉塞(へいそく)状況打破へ一刻も早く力強いメッセージを発することが首相の仕事だろう。論戦で対立点を明らかにした上で総選挙に臨めばいい。
自民党内では既に「次は麻生太郎幹事長だ」と「福田おろし」とも受け取れる声が噴き出し始めている。首相はよほど腹を固めて立ち向かわなければ、そのシナリオをなぞることになってしまう。
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