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【主張】ムシャラフ氏辞任 対テロ戦の後退を許すな

2008.8.20 03:21
このニュースのトピックス主張

 パキスタンのムシャラフ大統領が辞任した。反大統領派が多数の議会による大統領弾劾が避けられない情勢となった中でのことだった。すでに実権を失っていて、米国や軍の後押しを得られなかった結果でもある。

 2001年9月の米中枢同時テロ(9・11)以後、対米協調路線に舵(かじ)を切り、テロとの戦いに強権を振るってきたムシャラフ氏が辞任に追い込まれたことで、国際社会の対テロ戦に影響が出ることが懸念される。

 だが、イスラム過激派によるテロは人類と文明への敵対行為である。3044人の死者を出した9・11では日本人も24人が犠牲となった。テロとの戦いが後退することがあってはならない。

 「対テロ戦の最前線」と位置づけられてきたパキスタンの大統領辞任を受け、国際社会は改めて対テロ戦略を見直し、総力の再結集を図る必要がある。

 1999年のクーデター後、約9年に及んだムシャラフ氏による統治は、事実上の軍事独裁との批判も呼んだが、9・11後の対テロ戦で果たした役割は小さくない。対テロ戦協力で得た外国からの支援で国内経済も改善した。

 しかし、対米協調やイスラム過激派への強権発動は、イスラム教徒が9割を占めイスラム原理主義も根強い国内で反発を招いた。昨年10月に大統領に再選された直後に出した非常事態宣言、再選無効判決を出す可能性のあった最高裁長官の罷免がそれを加速した。

 反発をかわすため連携を組もうとした野党・人民党のブット党首(元首相)が年末に暗殺されたことも氏には逆風となった。

 その結果、ことし2月の総選挙で大統領支持政党が大敗、3月には第一党となった人民党を中心とする旧野党4党による連立新政権が発足、ムシャラフ氏の権力は急速に衰え、反大統領勢力による弾劾の動きにつながった。

 しかし、新政権は一枚岩ではない。過去、激しく対立した政党どうしだ。大統領辞任で政治が安定する保証はない。むしろ、権力闘争が再燃する恐れすらある。

 パキスタンはイスラム圏で唯一の核保有国でもある。政治の不安定化は核管理に不安を招く。核がテロ勢力の手に渡る事態は何としても防がなければならない。

 米国や日本はすでに新政権との協力方針を示しているが、民心をとらえる努力も不可欠だ。

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