現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

秋の国会―どんな波乱が待っている

 8月下旬か、いや9月下旬か。臨時国会の召集時期をめぐって難航していた与党内の調整がようやく決着した。福田首相の判断は、両者を足して二で割るような「9月中旬」だった。

 首相を取り巻く状況はいぜんとして厳しい。民主党などの野党はいうまでもなく、与党の公明党までもが「早期解散」を公然と求めている。

 解散・総選挙はいつなのか。それに踏み切るのは福田首相なのか、あるいは「ポスト福田」なのか。与野党の関心がその1点に集まるなかでの国会である。波乱含みの展開になるのは避けられそうもない。

 だからこそ、この国会の意義は明快だ。自公政権の継続がいいのか、それとも政権交代すべきなのか。来るべき総選挙に向けて、活発な政策論戦を通して有権者に明確な判断材料を提供することにほかならない。

 そのために、まず首相にきちんと語ってもらいたいことがふたつある。

 ひとつは、自公両党で待望論の大合唱が起きている景気対策のための大型補正予算案についてだ。

 公明党が「1兆円以上」を要求すれば、自民党の古賀誠選挙対策委員長は「2兆〜3兆円」をぶちあげる。首相は「財源より中身の議論が先」と言葉少なだが、真意はどうなのか。

 麻生太郎幹事長は11年度に基礎的財政収支を黒字化するという目標の先送りや、新規国債の発行を年間30兆円以下とする財政の歯止めをはずす可能性にまで言及した。仮にそうなれば、小泉政権以来の構造改革路線の一大転換である。首相もそれでいいのか。

 ふたつめは、インド洋での補給支援をめぐる特措法延長法案の扱いだ。

 首相が当初、8月中の国会召集をめざしたのは、この法案の衆院再可決に必要な日程を確保するためだった。

 それに待ったをかけたのが公明党である。数をたのんだ再可決にまた踏み切れば、国民の反発を招き、早期解散はむずかしくなる。ならば、国会召集は遅い方がいい。そんな胸算用があったようだ。

 首相はなお法案成立に前向きなようだが、麻生氏ら自民党執行部には公明党への同調論が広がっている。首相はどう折り合いをつけるのか。

 大型補正にしても、補給支援にしても、首相の決断によっては与党内の路線対立を誘発しかねない。だが、年末にかけて政局の緊張がいよいよ高まるなかで、いつまでも八方美人のあいまいさが許されるはずもない。

 民主党が臨時国会の冒頭から審議に復帰する方針なのはよいことだ。

 首相や閣僚を厳しくただすのはもちろんだが、それだけでは足りない。民主党政権ならこうするという現実的で建設的な対案を示し、政府与党と競い合う。そんな国会にしてほしい。

談合を防ぐ―入札改革をさらに進めよ

 知事の強大な権限を使って、公共工事をどの業者に請け負わせるかを決める。そのうえで形ばかりの入札を行い、落札業者から見返りにわいろを受け取る。

 こうした官製談合で摘発された3人のうち、昨年有罪が確定した前和歌山県知事に続き、佐藤栄佐久・前福島県知事も今月、収賄罪で有罪判決を受けた。残る前宮崎県知事は公判中だ。

 「談合によって工事が実際よりも高値で発注され、受注業者から利益の一部が選挙資金などに還流した」。福島事件の一審判決はこう指摘した。

 佐藤前知事は全国でも際立った地方分権論者だったが、こうした腐敗を見せつけられると、分権の主張は何だったのかと思う。

 福島県では事件後、新知事の下で官製も含めた談合を全面的になくそうと、入札制度を改革した。

 目玉は、従来の「指名競争入札」を全面的に「一般競争入札」に変えたことだ。入札に参加させる業者を行政機関が指名することが談合の温床になっていた。だれでも自由に参加できる「一般」になれば、行政が落札業者をあらかじめ決めておくことも、業者間で談合することも難しくなる。

 その結果、何が起きたか。予定価格に対する落札率が93%から85%に下がった。本来の競争が行われ、業者の取り分が減ったからだ。それだけ余分な税金を使わずに済んだことになる。

 こうした入札改革の動きは、和歌山、宮崎両県を含めて全国に広がりつつある。全国知事会が調べたところ、1千万円以上の工事について入札方法をすべて「一般」に切り替えた道府県は22になった。それに伴って落札率も下がり始めた。

 すべての都道府県で、同様の入札見直しを急いでもらいたい。

 ここに来て気になる動きがある。福島県が今年4月、1千万円未満の工事に限って、「指名競争入札」を1年間試験的に復活させたのだ。過当競争によって建築物の品質低下や連鎖倒産の懸念がある、という業界や県議会の要望を受けてのことだ。県は試行期間の落札率の動きを見て、その後の方針を決めるとしているが、談合の余地を残すと言われても仕方ない。

 財政の厳しい中で公共工事は削減していかざるをえない。土建業界からすれば、パイが小さくなるのだから、工事ごとの利益を守りたいだろう。公共工事に依存する地域経済の打撃も心配されている。

 だが、税金の無駄使いはなくしていかねばならない。各地の土建業界は農業や介護など他の業種への転換の道を様々に探っている。自治体や議会は、談合の温存につながりかねない制度とは決別し、地方の産業構造の転換を支援することに力を注いでほしい。

PR情報