◎日銀も景気下方修正 「埋蔵金」を減税に使わねば
「さらに減速」から「停滞」へ。日銀の景気判断は二カ月連続の下方修正となり、十年
前の金融システム不安のときと同じ水準にまで落ちてしまった。景気悪化と物価上昇のリスクを抱える容易ならざる事態である。
政府は、既に緊急経済対策の骨格をまとめたが、原油高騰に対する手当てや中小企業へ
の金融支援拡大などが中心で、「ごった煮」であるうえに、焼け石に水の印象も否めない。これほどの非常時には、「霞が関埋蔵金」を減税の財源に使う論議があってしかるべきではないか。
減税の中身については、現在出ている低所得者向けの「定額減税」や、三百万円を上限
とした株式配当非課税、期限切れを迎える住宅ローン減税の五年延長といった政策減税だけでは物足りない。柱となる減税は、個人消費の拡大や産業経済基盤の強化につながるものでなくてはなるまい。定率減税の復活や所得税減税、ガソリン税の暫定税率引き下げ、米政府が実施した「戻し税」方式による減税、投資減税など、思い切った策がいる。
景気悪化は米国経済の低迷や原油高が原因などと、人ごとのような顔をしている場合で
はないのである。どの減税案が最も効果的なのか、よく吟味したうえで骨太の対策を打ち出し、景気テコ入れに動いてもらいたい。
景気の下方修正は、国際金融市場の混乱や燃料・原材料高を背景に、輸出が伸び悩み、
物価上昇の影響で国内消費が低迷している現状を見ての判断だろう。先に公表された四―六月期の実質国内総生産(GDP)も4・四半期ぶりにマイナス成長となり、政府、日銀ともに景気後退を認めざるを得ない状況である。
自民党の古賀誠選対委員長は、テレビ番組で大型景気対策の必要性を説き、「赤字国債
に頼らなくても財務省に知恵を出させれば二、三兆円は出せる」と述べた。国債を財源にするのではなく、特別会計の余剰金など、「埋蔵金」を積極的に使う案は賛成だ。数兆円規模の大型補正予算を組み、即効性のある景気対策を打ち出す必要がある。
◎病院・開業医連携 患者紹介にとどまらず
経営改善計画の一環として開業医らとの地域医療連携を強化する金沢市立病院で、かか
りつけ医からの患者紹介率が四月以降50%超で推移し、早くも目標値を上回る状況という。患者紹介率の向上に並行して、一般病床利用率も高まっており、かかりつけ医との連携強化は患者の治療のためだけでなく、病院の経営改善にもつながっていることをうかがわせる。
病院と診療所(開業医)との「病診連携」は地域医療の大きな流れになっており、その
ための部署を設ける病院が多い。最近では七尾市の公立能登総合病院が患者のための「かかりつけ医紹介カード」を作成するなどしているが、病院と開業医の連携は患者の「紹介」と「受け入れ」にとどまらず、実際の医療でも連携を強めることが望まれる。
例えば、脳卒中などの患者に対して病院と開業医が共通の医療計画を持って対処する取
り組みが、このところ全国的に増えている。地域連携クリティカルパス(地域連携パス)といわれるこの方法はもっと積極的に試みられてよい。治療面での踏み込んだ病診連携は、患者・家族の安心感を一層高めることになる。
赤字経営が続いた金沢市立病院は、〇七年度から五カ年の経営改善計画に取り組んでい
る。基本的な考え方は、施設を「地域連携型病院」と位置づけ、関係機関と協力して、集中治療から回復・慢性期の治療、在宅療養まで切れ目のない医療体制の構築をめざしている。昨年度の決算見込みでは、病床利用率の向上などで経常利益が三千万円になるというから、かかりつけ医らとの連携促進の効果が早速表れた格好である。
ただ、連携の第一義は役割、機能を分担しながら、より良い医療を患者に提供すること
である。患者を紹介した開業医と受け入れ病院は連絡や情報交換を行っているが、診療面の連携を強化してこそ患者本位の地域連携型病院と言えよう。入院から在宅まで切れ目のない医療を確実、効果的に行う地域連携パスは、そのための有効な方法の一つであろう。