大人のビジネスマンならばピエロを演じるだけでなく、
スマートにまとめたいところです。





●石原壮一郎●
言わずと知れた‘大人力’の大家。『大人力検定DX』(文春文庫PLUS)『30女という病』(講談社)ほか著書多数。新刊『大人の合コン力検定』(ソフトバンク クリエイティブ)



■ビジネスマン危機一髪!! 石原壮一郎の「大人の切り抜け力」第21回
「渾身のギャグがスベったときの切り抜け力」■



パチンコ店のアナウンス調で「今日も絶好調にスベっております」

ギャグというものは力を込めればウケる、というものではありません。場を和ませるため、己を捨てる覚悟とともに断崖絶壁から飛び込む。そんな自己犠牲の精神が、ビジネスマンのギャグの本道です。にも関わらず、「笑いを取って、自分の評価を上げる」ことを目的だと取り違えてしまう人が何と多いことでしょうか。スベったときこそ、自分の役割をまっとうしたと誇っていいのです。勢いよく「今日もスベっております」と自らの手柄を喧伝して然るべき場面といえるでしょう。





マイクテストをするかのように「テステス。ただいま、ギャグのテスト中」とやり過ごす

ビジネスでも人生でもベテランであれば「スベる」、「失敗する」ことに慣れ、大きなダメージを受けることはないかもしれません。しかし、キャリアの浅いうちはどうしても「恥ずかしい」という気持ちが先行してしまいます。どうしても受け止めきれない恥ずかしさがあるならば、失敗ギャグであることを正直に相手に伝えるという手もあります。受け止められるようになったそのとき、「あのときはまだ青かった……」と、甘酸っぱい思い出になることでしょう。





「こ、この地獄のようなスベり様は一体……」などと絶句する

プロの芸人さんがよく使うこのような表現は、本来であれば間や言い回しにかなりの技術が必要な手法です。しかし最近では笑いについてのリテラシーが上がったせいか、こうした自虐表現に対して、周囲が寛容な態度で笑ってくれたり、絶妙なツッコミを返してくれることすらあるようです。ただし、絶妙な切り返しはそうそうしてもらえるものではありません。一歩間違えば、さらなる地滑りという地獄が口を開けているという危険に対しても覚悟を決めることが必要です。





スベったことに臆せず、同じギャグを畳みかける

前述したように、「スベる」ということは、ビジネスマンとしては場に貢献した証であり、勲章のようなもの。一度、ギャグをその口から放ったならば、「ウケる」もしくは「スベる」という、ハッキリした評価を得るまで不退転の決意で場に臨みましょう。オンビジネスという戦場では、どんなにいい“姿勢”で臨もうとも結果を出せなければ、評価されることはありません。きっちり結果を出し、場に対しての責任を取る。それこそが大人としてのケジメです。





洋服を一枚羽織る

「スベった」、「サムい」という一見マイナスに思われがちな評価は、そのときの本人にとってツライ出来事かもしれません。しかし、その場の印象に惑わされてはなりません。「スベり芸」という言葉があるくらいですから、その場の寒さにさえ耐えきることができれば、むしろ絶好の前フリになり得ます。その場で自らツッコミを入れるのが難しい人でも、後から「いやー、あの時は本当に寒かったなぁ」と思い出話に花を咲かせるための壮大な前フリとして使う。そんな切り抜け方もあっていいのです。





×NG――Out Of Ranking 「なぜ拾わないのか」と相手にツッコミを入れる

最近、時折こうした光景を見かけることがあります。本人はギャグを重ねているつもりかもしれませんが、本人が思うほど面白くもなく、筋違いな怒りを相手にブツけているに過ぎません。お食事中の方には大変申し訳ありませんが、「自分のケツは自分で拭け」という言葉もあります。「スベることは誇りである」と心得て、堂々とスベっていきましょう。






イラストレーション:日辻彩(Aya Hitsuji)


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