高村正彦外相が北京市内で中国の楊潔☆外相と会談した。中国製ギョーザ中毒事件の全容解明に向け、両国の捜査当局を早期に接触させ、協力態勢を強化していくことで一致した。
ギョーザ中毒事件に関しては、北京五輪開会式に先立って行われた日中首脳会談でも、福田康夫首相が中国の胡錦濤国家主席、温家宝首相に早期解決を促したばかりだ。具体的な協力態勢が確認できたことで、手詰まり状態だった事件の捜査が加速されることを期待したい。
今回の外相会談でギョーザ問題が主要テーマに浮上したのは、日本で起きた中毒事件と同様の中毒被害が六月に中国でも発生していたことが分かったのがきっかけだ。
高村氏は「中国の事件との関連性も含め、真相究明に全力を挙げることが重要。早急に捜査当局間で意見交換したい」と要請した。これに対し楊氏は「中国人の健康、安全にもかかわる問題だ。(両国の)捜査当局の協力を強化し、早急に真相解明したい。早期に関連部門を接触させたい」と応じた。
中国・天洋食品が製造した冷凍ギョーザを食べた千葉、兵庫両県の三家族十人が有機リン系中毒になったのは、昨年十二月から今年一月にかけてのことだ。商品からは国内で使用が禁じられている殺虫剤メタミドホスが検出された。
事件後、天洋食品は冷凍ギョーザを回収したが、一部が流通していた。中国での被害者はそれを食べて中毒を起こしたとされ、その後の調査でメタミドホスが検出されたという。
中国側はこれまで「中国国内での混入の可能性は極めて低い」と主張してきたが、日本に輸出されていないギョーザからメタミドホスが検出されたことで、殺虫剤は中国で混入されたことが決定的となった。
「食の安全」に対する国民の関心は高い。捜査協力の過程では、情報開示も重要となろう。高村外相は、北朝鮮による拉致問題再調査進展への協力を中国に期待していることもあり、捜査情報開示に関する強硬な物言いは自粛した。しかし、消費者の不安解消のためにも情報開示を求めることは必要だ。
ただ、中国指導部の意向通りに全容解明に進むかどうか不透明な要素も残る。事件解明が遅れている背景には、中国の地方当局の腐敗や関係機関の利害対立もあるとみられるからだ。早期解決に向かわなければ、「消費者重視」を打ち出し、「安心実現内閣」を掲げる福田政権にとって大きな痛手となることは間違いなかろう。
☆は「竹かんむり」の下に、「厘」の里の部分が「虎」
男女とも育児休業の取得が増えている。厚生労働省の二〇〇七年度の雇用均等基本調査で分かった。発表によると、前年度に出産した女性の育休取得率は89・7%に上った。二年前の前回調査より17・4ポイントも増えた。男性の取得率も1・56%と、約三倍となった。
調査は、昨年の十月、常用労働者を五人以上雇っている約一万事業所を対象に実施した。回答率は61・5%だった。
育休が取りやすい職場環境になってきたのだろうが、男性の場合は依然として低い水準だ。取得率が高い女性の場合も課題がある。事業所の規模が小さいほど取得率が低い。五百人以上の事業所は94・0%だが、二十九―五人は65・3%である。
政府は育休取得率を女性の場合、一二年に80%とする目標を掲げる。中小・零細事業所の実態をみれば、すでに達成したと安心はできない。男性の目標取得率は一二年に5%、一七年に10%としているが、このままでは実現できそうにない。
男性の育休取得が進まないのは「仕事も育児も」ではなく「男は仕事、女は育児」という考えが根強いからだろう。政府は働き方を見直し、仕事と家庭生活の調和を図るワークライフバランスの浸透を目指している。仕事をしながら産み育てやすい環境整備のために、ワークライフバランスの実現を少子化対策の最優先課題ともする。
だが、内閣府が今年六月に実施した世論調査では、「ワークライフバランス」という言葉について「名前も内容も知っている」はわずか9・8%にすぎなかった。認知度は低い。
対策の強化が必要だ。同時に、私たちも仕事と生活の調和は人生の質を高めるために重要であることを認識し、前向きに取り組むことが大切だろう。
(2008年8月19日掲載)