厚生年金の加入記録の改ざん問題で、滋賀県の元社会保険事務所課長、尾崎孝雄さん(55)が19日、民主党の会合で、「収納率を上げるため、給与水準(標準報酬月額)を最低ラインまで下げるよう、社保事務所が企業に指導した」と、社保事務所が違法行為にかかわっていたことを証言した。官主導を元職員が公の場で明らかにするのは初めて。社保庁は「職員の関与は不明」としてきたが、OBからも「不正」をあらわにされた形だ。
尾崎さんは90年代後半から数年間、滋賀県内の社保事務所で厚生年金の担当課長を務めた。保険料は給与水準に連動するため、低くするほど徴収料が減る。このため、滞納企業に対し、▽社長や社員の標準報酬月額をさかのぼって最低水準に訂正する▽虚偽の厚生年金の脱退届を出させ、業務継続を黙認する−−などを指導したという。
社会保険事務局(当時は県保険課)主催で「収納対策会議」が毎月開かれていたが、尾崎さんは「こうした手法を使っても収納率を上げるよう指示があった。社保事務所では、所長が徴収課長に『こうしろ』と指示した」と明言した。自身も徴収課長時代、約900万円の保険料を滞納した企業の社長に「給料を落とす方法もある。(将来の年金が減るため)社員には説明して」と促したという。さらに「本庁が知らないのはあり得ず、同じ処理は全国で行われた」と述べた。
厚生年金のこうした不正処理は、総務省年金記録確認第三者委員会が2月までに16件を認定。これとは別に企業側が社保職員の「指導」を証言した例もあるが、社保庁は職員の関与について「未確認」としている。【野倉恵】
【関連ニュース】
年金問題:給与水準改ざん、さらに157人分
無年金:入力ミスで13年 73歳、記録見つけ受給資格
年金機構:懲戒処分歴の職員一律不採用…計画を閣議決定
年金問題:給与水準改ざん さらに157人分
年金問題:無年金13年後の回復 入力ミス、73歳に受給資格