2008-08-19
解題:やる夫(で学ぶ)シリーズ
ver.1 2008.Aug.19
概論
- 教材関連の調査をやっていると、「単元あたりの情報量が多くて読む気にならない」という評価にぶち当たる。
- 教材の中には、見開き 2 ページで、一つのテーマを扱うような編集が見受けられ、一定の評価を得ている。
- やる夫(で学ぶ)シリーズの特徴は、「1レス・1フレーズ」であり、上記の「見開き・1テーマ」の編集よりもさらに単元あたりの情報量が少ない。
- そういう意味では英語エッセイにおける、「1パラグラフ・1センテンス*1」に近い構成。
- 「1レス・1フレーズ」構成の都合上、多くの情報の平易化・捨象があるが、情報を短絡的に受け取るやる夫をやらない夫が突っ込む(あるいは対称的な立場にいる存在として価値の相対化を行う)ことで含みを持たせている。
- 掛け合いステージと解説ステージが分かれており、主観・客観の区分けがなされている。
- 情報の出典が明らかにされない傾向がある。
- これによって逆説的に「経験則的な真実性」を帯びる。また登場人物の掛け合いがこれを強化する。
登場人物と役割
登場人物 | 役割 |
---|---|
やる夫 | 読み手の分身であり反面教師。脊髄反射的・短絡的思考で、やらない夫と読み手の双方から突っ込みを受ける。 |
やらない夫 | 指導者あるいは先達。簡略化された情報に含みを持たせる突っ込み役。 |
解説者(長門有希*2) | 生き字引、解説。涼宮ハルヒシリーズの長門有希であることが多い。この人物の情報は公正中立であるという暗黙の了解がある。 |
主なパターン
パターン | 例 |
---|---|
やらない夫が先輩としてやる夫を指導する | のとーりあす やる夫で学ぶ自作PC |
やる夫・やらない夫が漫才、長門が解説 | ベア速 やるおで学ぶハイパーインフレ |
まとめ
- 「1レス・1フレーズ」構成が、わかりやすさとインパクトを持たせている。
- 登場人物の役割分担が情報の平易化・捨象の弊害を補っている。
- 「経験則的な真実性」が共感を呼ぶ。(情報がウェットである)
おまけ
教材の話
概論の最初に教材の話を出したが、教材の中にはマンガを使うことで「やる夫(で学ぶ)シリーズ」的な構成を持たせていることで一見とっつくやすくしているものはある。しかし、現代社会は情報量が多く、そうした状況下で一番大事なことは情報の平易化・捨象である。
つまり、 bmp で保存するのではなく、 jpeg で保存するということ。大筋で合っていれば、詳細は別途調べることが可能。
また、一つの単元に情報を詰め込まず、細分化することが重要である。メール文化・ウェブ文化の情報伝達は動物的になっており、くどい言い回しは非効率と忌避される。「1レス・1フレーズ」の威力はここで発揮される。同じ情報量であれば、くどくどと文章にするより、箇条書きにしたほうが良い。
例として挙げると、
- 小泉元総理のワンフレーズ・ポリティックス
- プレゼンにおける高橋メソッド
要するにアテンション・エコノミーという文脈で教材は再構成されるべきだろう。
情報のドライ・ウェット
情報には2種類あって、
- 客観的情報(ドライ)
- 経験的情報(ウェット)
後者のほうが共感を得られ、納得度が高い。作品鑑賞において、どうしても作家論から離れられないのはそのためであり、これは「ヒトが興味を持つのはヒト」という種族特性に因る。
「何を言ったかより、誰が言ったかが重要」という極々当り前の現象は、ドライな情報よりウェットな情報のほうが共感を得られやすいからに他ならない。
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おとなり日記
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