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最終更新:2008年8月19日(火) 18時50分

帝王切開死亡事故、あす注目の判決

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 福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた女性が死亡した事故をめぐって、業務上過失致死などの罪に問われた担当医の判決が20日に言い渡されます。医学的判断をめぐって医師個人の刑事責任が問われた今回の裁判は、医療現場にも大きな波紋を広げています。

 現役の産婦人科の医師の逮捕は、産婦人科の医師のみならず医療界全体に大きな衝撃が走りました。

 「医師個人に刑事的な責任が追及されるということに、学会としては疑問を感じていると」(日本産科婦人科学会の会見)

 この事件は2004年12月、福島県立大野病院で帝王切開の手術を受けた当時29歳の女性が死亡。亡くなった女性は、胎盤が子宮に癒着してはがれなくなる癒着胎盤という極めてまれなケースでした。

 女性の死亡から実に1年2か月後、執刀した加藤克彦医師が、胎盤を漫然とはがしたことによる出血で死亡させたとして逮捕・起訴される事態となりました。

 胎盤をはがした医療行為が過失なのか、あるいは正当な医療行為なのか。その後の裁判は、医師の判断をめぐって進められました。

 「その場その場で最適な、適切な処置をしなくてはならないので、僕はそれを選択しただけです」(加藤克彦被告)

 検察側は、癒着がわかった時点で胎盤をはがすのをやめて、子宮ごと摘出すべきだったとして、禁固1年、罰金10万円を求刑しました。これに対し弁護側は、いったんはがし始めたら中止しないのが通常の医療で、医師の判断は正しいとして無罪を主張しました。

 今回の事件は、お産そのものにも大きな影響を及ぼしました。福島県南会津郡で唯一、産婦人科がある病院。医師1人で診察からお産までを受け持っていましたが、その医師もいなくなり、産婦人科は一時休診。現在もお産は扱っていません。

 そこで妊婦さんは、この病院から数十キロ離れた会津若松市の病院まで通わなければなりません。
 「大きい、いい病院に行くには、遠くに行くしかない」(妊婦さん)

 今、分娩ができる施設を地域ごとに集約化する動きが、ここ福島県に限らず全国で加速化しています。産科医不足に加え、少しでもリスクのあるお産は、施設の整った病院に任せようという「リスク回避」の意識が医療現場で急速に広がっているためです。

 「従来は開業している診療所の先生方も自分で扱っていたような患者さんでも、多少でもリスクがある患者さんに関しては早めに中核的な病院に送るようになってきました。そういう意味では、ある程度『萎縮診療』にならざるをえないと思う」(明治病院産婦人科・幡研一医師)

 さらに、医師の逮捕・起訴に医療界が一斉に反発しました。「通常の医療行為なのに、死亡という結果だけを見て刑事責任を問われることになれば、医療そのものが萎縮してしまう」。産婦人科のみならず、医療界全体から強い抗議の声が上がったのです。

 「過重な負担に献身的に耐えてきた医師個人の責任を追及するには、そぐわない面があります」(日本産科婦人科学会の会見)

 大野病院事件後、2年半の間に福島県では分娩のできる施設が31から20にまで減っています。こうした状況が今後どうなっていくのか、産科のみならず、医療全体にも大きな影響を与えるだけに、20日の判決に注目が集まります。(19日18:13)



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