最近の中国の製造業の躍進はめざましいものがある。自動車生産が行われ、大型旅客機の製造計画が本格始動するなど産業構造が高度化している。しかし、「産業資本」が存在するとは必ずしも言えない。中国の場合はコングロマリットという形態とも異なり、最初から商業資本と産業資本が一体化した「商・産複合資本」があるといったほうが正しい。
一般に産業資本は設備を稼働させて製品を生産し、その利益を再投資して事業と利益の拡大を図るものと定義されている。産業資本は、景気変動や需要構造の変化で利益が出なくなると、原材料費や労務費の削減や、生産する製品の品種を変えるなどして生き残りを図る。
中国の石油化学関連企業の例をあげると、一応コスト削減などの生き残り策はとるが、むしろ第一に考えるのは使用する原材料の投機による利益の確保である。国有や民営の企業が事業規模ごとにいくつかのグループを作り、セミナーに参加し、マーケット情報を収集し、情報交換をしながら一斉に動くので、大きいグループは大概勝負に勝つ。自社で使用しない原材料の投機を行う業績不振企業もある。投機に失敗し倒産する製造会社もあるが、それらのほとんどは規模が小さく情報収集力や市場への影響力が劣っているグループである。
このように、投機による利益で本業の損失を埋め合わせる行動をとるが、これが考えあぐねた末にではなく即座に、ごく当たり前に行われる。これは他の国では見られない中国独特の産業形態と言える。中国人には本質的に商業資本的なDNAが組み込まれており、臨機応変にその素質を発現させる「商・産複合資本」を作り出している。(皓)