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2008年8月19日

 小紙に、能登の海岸に鯨が迷い込んだ、という記事と写真が載った。20年前のことである。すぐに知己の研究者から、「頭だけでも手に入れたい」と頼まれた

腐臭に閉口しながら車で金沢まで運んだ鯨は、世界で数例しか見つかっていない希少種だった。小さな記事がきっかけで、海外とも連携した日本海の鯨研究がいまも盛んである

あの折、頭を切り離された鯨の行方が気になった。地元の人に尋ねたら「肉は、みそ漬けにするといいそうな」。「珍客」をどう扱うか困惑していると思ったら、ちゃんと食べ方を語り伝えている。漁師の知識の蓄積に感心した

鯨と海の人々とは、深い交わりを続けてきた。乱獲を続けた揚げ句、鯨を救えと暴れ回る連中とは違う。南極海の調査捕鯨を妨害した事件で、警視庁が無法者の国際手配を決めた。彼らの妨害で捕鯨頭数は計画を下回り、鯨は高値をつけている。夏負けしないように口にした味も、いまはなかなか手が届かない

無法者退治の決断は胸のすく話だが、反捕鯨国がどこまで力を貸してくれるか。振り上げた拳に、捕鯨国の威信がかかっている。


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