先の通常国会で国家公務員制度改革基本法が成立したのを受け、「内閣人事局」の創設に向けた関連法案の策定作業が本格化している。省庁の幹部人事を内閣で一元管理することを狙っており、公務員制度改革の目玉となるものだ。
基本法は、今後五年間の公務員制度改革の方向を示している。自民、公明、民主の三党が共同修正に合意するという異例の展開によってできた。
焦点となった内閣人事局の創設は、民主党案を政府・与党が受け入れたものだ。幹部人事に際して内閣人事局は、独自に収集した人事情報を官房長官に提供し、官房長官はこれを基に幹部候補者名簿を作成する。そのうえで、閣僚が首相、官房長官と協議して任免する仕組みだ。人事原案は各省庁がつくるとした政府案に比べ、官邸主導を強く打ち出している。
人事権を奪われる省庁側の反発は必至だ。そこで内閣人事局の権限を個別法で明確に位置付ける必要がある。関連法案は一年以内に整備することが基本法に明記されており、政府は来年の通常国会へ提出する予定だ。
福田改造内閣の茂木敏充行政改革担当相は「どんな抵抗があってもやり遂げる。中途半端に終わらせないのが、大きな使命だ」と就任インタビューで述べている。前任の渡辺喜美氏が官僚批判で他の閣僚との対立も辞さなかったが、茂木行革担当相の手腕によるところが大きいといえよう。
茂木行革担当相の下で実動部隊となるのが国家公務員制度改革推進本部事務局だ。日本経団連参与の立花宏事務局長をトップに、幹部十三人中五人は民間人が占める予定の官民混成チームだ。民間の発想で、閉鎖的な公務員制度の現状にまず風穴を開けることが求められる。
幹部人事の見直しに関連して、?種試験採用職員がほぼ自動的に幹部になるキャリア制が廃止され、採用試験は総合職、一般職、専門職に再編される。また、政治家と官僚が接触した場合に記録を作成し、公開することが法案に盛り込まれた。いずれも縦割り行政、政官癒着といった現行の公務員制度の弊害を除くことを狙っている。
さらに、労働条件を労使交渉で決定できる団体協約締結権の範囲拡大や六十五歳への定年引き上げなど、検討しなければならない課題がある。
内閣人事局の関連法案は改革の第一歩である。法案修正にかかわった民主党も一緒に制度設計の議論を深めてほしい。官僚の抵抗を排除するために、政治の強い指導力が欠かせない。
北京五輪女子マラソンで、日本のメダル獲得はならなかった。一九八八年のソウル五輪以来である。残念な結果だが、地元天満屋の中村友梨香選手の頑張りには大きな拍手を送りたい。二度目のマラソンを五輪という大舞台で臨み、十三位に食い込んだ。日本勢として最後まで踏ん張りを見せてくれた。
史上初の二連覇を目指した野口みずき選手をはじめ、二大会連続出場となる土佐礼子選手、それに新鋭の中村選手と、北京五輪女子マラソンの布陣は期待が高かった。しかし、本番直前になって野口選手が故障で欠場というアクシデントに見舞われ、補欠の補充も見送られた。日本の三連覇もかかった五輪だけに土佐、中村両選手にかかる重圧は大きかったに違いない。
レースは序盤、土佐、中村両選手とも先頭集団に入り、好調な滑り出しに見えたが、土佐選手が途中棄権した。アテネでは五位で、今回はメダルも期待されただけに気の毒と言うほかない。中村選手は日本勢最後のとりでとなった。中盤以降、上位を走る有力選手たちからだんだんと引き離されたが、よく力走した。
所属する天満屋からは、シドニーの山口衛里、アテネの坂本直子の両選手に続く三大会連続五輪出場であり、山口、坂本両選手はともに七位入賞を果たした。中村選手は入賞はならなかったが、天満屋勢の強さをあらためて示した。
中村選手は、今年三月の名古屋国際女子マラソンで初マラソンながら優勝し、北京出場を決めた。わずか五カ月前のことだ。ここにきて不測の事態が相次ぐ日本勢の中で、四年後へつながる力を見せてくれた。きっと自信にもなっただろう。北京での経験を糧に、今度は世界のトップを目指してもらいたい。
(2008年8月18日掲載)