「少子化対策」という言葉を新聞などで毎日のように目にしますし、実際に省庁や都道府県には少子化対策の担当部署が設けられています。
ところが、年金、医療保険をはじめとする社会保障制度、労働法制、教育・保育サービスなどが、だんだん「規制緩和」「自己責任」といった方向に進んでいるのを見ると、若い人たちが「おちおち子どもを産んではいられない」といった気持ちになったとしても不思議ではありません。「少子化対策」とは「少子化を食い止めるための対策」ではなく、「少子社会を進める少子化対策」ではないかと勘繰りたくもなってきます。
雇用の流動化が進む時代においては、かつては効率的であった「家計収入を1人の働き手に集中させる家族像」は、今や大きなリスクであると言わざるを得ません。そもそも自活するのも難しいような給与水準で働く人が増えている中、一般的には夫婦揃って収入を得ないことには、教育費や将来に備えての資産形成もままなりません。
女性の場合、パートタイム労働者や派遣労働者として働くケースも多いと思われます。妊娠や出産、子育てに伴って、パートでも派遣でも法律で定められている権利があります。知らないために泣き寝入りとならないように、しっかり知っておきたいものです。
産前・産後の休暇はすべての労働者の権利
働きながら出産する場合、一定期間はどうしても仕事を休むことになります。雇い主である会社は、産前・産後の休業を認めなければなりません。
産前は出産予定日の6週間(双子などでは14週間)前から、産後は出産翌日から原則8週間です。産前・産後の休業を取る権利は、雇用形態にかかわらないので、パートでも派遣でもアルバイトでも取ることができます。
これは労働基準法に定められた権利なので、就業規則にないからと言って取れないことはありません。時々、妊娠を理由に解雇されたという例があるようですが、結婚や妊娠、出産を理由として解雇することは法律で禁止されています。
休業中の給料が支払われるかどうかについては就業規則次第ですが、無給のことが多いようです。もし、出産する人が健康保険の被保険者であれば、健康保険から出産手当金と出産育児一時金が支給されます。ただし、休業中でお給料がなくても社会保険料は支払わなくてはなりません。毎月一定期日に会社に振り込むか、職場復帰後に支払うなどの方法を取ります。
子育てのための休業制度
生まれた子どもが満1歳になるまでは、男女を問わず育児のための休業を取ることができます。ただし、希望しているにもかかわらず保育所に入所できないとか、子どもを養育する予定だった配偶者が死亡したり、病気やけがなどで養育できないといった事情が生じたりした場合、子どもが1歳6カ月に達するまで休業できます。育児休業は期間を定めた契約で、パートや派遣として働いている人も以下の条件を満たせば取ることが可能です。
* 同じ事業主に続けて雇われた期間が1年以上あること
* 子どもが1歳になる日を超えて、引き続き雇われることが見込まれること
また、雇用保険の被保険者期間が1年以上あるなど、所定の要件を満たしていれば、原則として出産後1年間、育児休業基本給付金が受け取れます。保育所に入所できないなどの理由があれば、給付金も半年間延長して受けられます。育児休業期間が終わって職場復帰した場合、復帰後6カ月以上在籍し、かつ雇用保険の被保険者であれば、職場復帰給付金が受け取れます。
仕事と育児をこなして継続的な収入と自信を
先進国の多くが小学校から大学までの教育費を無料にしているのとは対照的に、日本において子どもを育てることは、親の経済的負担が重くなることを意味します。女性の社会進出が著しいと言われますが、社会全体で子供を育てる仕組みがない以上、また短期的な収益や効率性を企業が求める以上、出産を機に「仕事を続けるか辞めるか」といった、男性には迫られることのない選択を女性が迫られるのが現実です。
しかし、家計運営において、継続して収入を得続けることは重要な柱です。一時期は体力的にも時間的にも大変だと思いますが、それが一生続くわけではありません。金銭的なゆとりだけでなく、限られた時間の中で工夫を重ねながら仕事と育児をこなしていったという自信は、公私ともに大きな財産となってくれるはずです。
「今の自分」を笑って振り返る「将来の自分」に向かって、仕事も子育ても楽しく賢く乗り切っていきましょう。