【モスクワ杉尾直哉】グルジア南オセチア紛争に介入したロシア軍は18日に撤退を開始したが、軍高官は再派兵の可能性を示唆するなどグルジア側をけん制した。ロシア軍がグルジアに動員した1万人以上とされる部隊の撤退がいつ完了するかは不透明で、情勢は依然、流動的だ。
ロシア軍の撤退について、ノゴビツィン参謀次長は18日の会見で、「永久的な引き揚げでなく、あくまで一時的な撤退である」と強調。今後の情勢次第でいつでもグルジア側に軍を再投入する構えを明確にした。
また、グルジア西海岸で海上封鎖などに当たっているロシア黒海艦隊に関しては、「紛争が完全に解決されてから帰還する」と述べ、当面は展開を続ける考えを示した。海軍の「駐留継続」はグルジアや欧米の反発を呼びそうだ。
一方、ロシア政府は紛争地域の復興に着手し、戦闘で破壊された南オセチア州の州都ツヒンバリのインフラ再建などに最大100億ルーブル(約450億円)を拠出する方針を表明した。巨額の復興支援を主導することで、ロシアの影響力強化を図る構えだ。
また、ロシア非常事態省はグルジア中部ゴリに食糧や水など援助物資を届ける計画を発表。ゴリはグルジア政府が支配する街だが、紛争後、行政や警察組織が機能していないという。ロシア側は「人道支援」を名目にゴリでも存在感を強める狙いがある。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、今回の紛争に伴う難民・避難民の数は約11万8000人にのぼる。内訳は▽南オセチアから北隣のロシア領・北オセチア共和国への難民が3万人▽南オセチアからグルジア側への避難民が1万5000人▽グルジア国内での避難民が7万3000人。難民・避難民の中には戦闘再開を心配する者が多く、帰還実現には時間がかかりそうだ。
毎日新聞 2008年8月18日 21時50分(最終更新 8月18日 23時56分)