ロシア出身で大相撲間垣部屋の若ノ鵬（２０）が１８日、大麻取締法違反容疑で逮捕された。時津風部屋の力士暴行死事件を機に発足した再発防止検討委員会が、日本相撲協会全体に「綱紀粛正」を促し、７月の名古屋場所中に文部科学省に報告書を提出した直後に発覚した前代未聞の不祥事。しかも、協会理事で師匠の間垣親方（元横綱・二代目若乃花）は、５月に弟子へ暴行したとして減俸処分されたばかりだが、教訓は生かされなかった。協会の北の湖理事長は同日夜に会見し、若ノ鵬に厳しい処分を課す意向を示した。【上鵜瀬浄】
若ノ鵬逮捕の連絡が協会に入ったのは午後４時ごろ。再発防止検討委の副委員長を務め、全５３部屋を視察してきた友綱親方（元関脇・魁輝）は、間垣部屋から事件の報告はないとしたうえで、「協会挙げて一生懸命取り組んできたことが、何も理解されていなかったかと思うと……。それに、また間垣部屋かと二重のショックだ」と話した。
７月の名古屋場所番付ではロシア出身力士は若ノ鵬のほか５人いる。このうち２人は所属部屋の師匠を通じて既に事情聴取したが、無関係を主張しているという。また残りの３人については１９日にも、再発防止検討委メンバーが所属部屋に出向き、聞き取り調査することを決めた。同委の委員長を務める伊勢ノ海親方（元関脇・藤ノ川）は「再発防止検討委員長として常識や作法についてのマニュアル本作成に取り組んでいる最中なだけに、大変遺憾」とコメントした。
一方、東京都墨田区にある間垣部屋では、不在の間垣親方に代わり、部屋関係者が「（親方は）１９日に警察の話を聞いてから対応します」と説明した。
◇おことわり
毎日新聞は少年法の精神を尊重し、容疑事実の発生時に未成年であれば、その後成人に達しても実名報道を控えることを原則にしています。しかし、今回のケースでは（１）若ノ鵬が大相撲の幕内力士という公知の地位にある（２）日本相撲協会が実名を出しておわび会見をした（３）発生当時の年齢が成人まであと２週間の１９歳１１カ月だった−−ことなどから総合的に判断し、実名で報道しました。
◆主な不祥事や処分
◇大相撲界での主な不祥事や処分◇
６５年５月 横綱の柏戸と大鵬のピストル所持が発覚。６月に警視庁によって書類送検され、協会は２人へけん責処分
８７年１２月 横綱・双羽黒が師匠夫人らに暴行を加え失跡。協会は双羽黒の廃業届を受理。師匠は３０％（３カ月）、当時の全理事も２０％（３カ月）の減俸
９７年１月 行方不明になり、初場所を欠勤した山響親方（元小結・前乃臻）を解雇
００年１２月 幕内・闘牙が車を運転中に死亡事故。闘牙は０１年初場所を出場自粛。師匠の高砂親方（元小結・富士錦）は２階級降格
０６年７月 幕内・露鵬が名古屋場所で毎日新聞カメラマンら２人を殴る。３日間出場停止
０７年５月 幕内・旭天鵬が４月末に力士に禁止されている車の運転をし、人身事故が発覚。夏場所の出場停止と３０％（３カ月）の減俸。師匠の大島親方（元大関・旭国）も監督不行き届きで３０％（３カ月）の減俸
０７年８月 横綱・朝青龍のモンゴルでのサッカー問題で、秋場所から２場所連続出場停止や３０％（４カ月）の減俸。師匠の高砂親方（元大関・朝潮）も３０％（４カ月）の減俸
０７年１０月 時津風部屋の力士暴行死問題で、時津風親方（元小結・双津竜）を解雇。北の湖理事長が５０％（４カ月）、他の役員は３０％（３カ月）自主減俸。０８年２月に前親方と弟子３人は０８年２月に傷害致死容疑で逮捕
０８年５月 十両・豊桜と間垣親方（元横綱・二代目若乃花）が、それぞれ部屋の若手力士に暴力を振っていたことが発覚。豊桜と間垣親方は減俸３０％（３カ月）、豊桜の師匠の陸奥親方（元大関・霧島）がけん責処分
※肩書は当時
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