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【社説】

出先機関見直し 地方の熱意で加速を

2008年8月18日

 国の出先機関の統廃合を目指す方針を政府の地方分権改革推進委員会が示した。今後具体論に入れば、自らの「領土」死守へ霞が関の抵抗は必至だ。政権がひるむなら地方の熱意で突破したい。

 地方分権委の中間報告を受け、福田康夫首相は「役所の利害にとらわれず政治的リーダーシップを発揮してほしい」と全閣僚に指示した。首相が好んで使うフレーズだが、実際には府省の代弁者のように振る舞う閣僚が少なくなかった。改造内閣のメンバーはまず心してもらいたい。

 出先機関見直しは国から地方への権限移譲を盛り込んだ第一次勧告に続く二次勧告の柱となる。

 国家公務員約三十三万人のうち二十一万人は全国の出先で働く。国土交通省の地方整備局や北海道開発局、農林水産省の地方農政局、厚生労働省の都道府県労働局などが主な出先で、自治体の仕事とダブる「二重行政」の分野が多すぎるというのが出発点だ。

 大臣のチェックが効きにくい一方、地域住民の意向が反映できない点も分権委は問題視する。地方整備局による道路特定財源の無駄遣いは記憶に新しい。北海道開発局の官製談合事件も同様だ。

 このため八府省十五機関が担う事務・権限を精査し、必要性のない組織の見直し策として、廃止、他の出先への吸収、府省を超えた総合的な出先への集約化などを明記した。

 事務、権限を自治体へ移譲する際は人材や財源を確保する。今回は基本方針を示すにとどめ、具体名については各府省の意見を九月から聴取した上で、年内に最終決定する方針だ。

 霞が関との攻防の最大の焦点は全国で八つある地方整備局の扱いだ。職員二万人、年間予算規模八兆円を超える“要所”だけに、国交省の抵抗は並大抵ではないだろう。谷垣禎一国交相は役所の言い分ばかりに耳を傾けず、大胆な統廃合へ先頭に立ってほしい。

 権限移譲を加速する上で欠かせないのが地方の熱意だ。住民が主役の地方自治実現への好機を、逆に重荷と受け止める空気が首長側に漂うのは理解に苦しむ。移譲へ地方が大きな声を発してこそ、分権の歯車は回転する。

 秋田県の寺田典城知事は全国知事会の現状について「もはや闘う知事会ではなくなった」と批判した。これに他の知事が反論する騒動があったが、知事同士でいざこざを起こしても仕方がない。対戦相手を間違えてはいけない。

 

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