ミュージカル「エリザベート」
涼風真世、朝海ひかるのダブルキャスト 8月3日から28日 中日劇場
【経済】夢実現へ“投資”262億円 JR東海の日本車両子会社化2008年8月16日 09時15分
JR東海が15日発表した日本車両製造の子会社化は、2025年の営業開始を目指す“夢の超特急”リニア中央新幹線の実現に向けた布石といえる。民営化後、東海道新幹線を軸に鉄道事業者として安定した基盤を築いた上で、鉄道車両の製造まで手を広げ、従来の鉄道の概念から外れた技術の固まり「リニア」の実用化を加速させる。 (有川正俊) JR東海は、東海道新幹線の高架橋の耐震補強など安全、安定に関する投資や、品川、新横浜など東海道新幹線の沿線の駅の開発が一段落。手元資金に余裕が出てきている。日本車両の子会社化にかかる費用262億円は借り入れで対応するが、規模は手元資金の枠内で収まっている。 今回の子会社化は、JR東海が資金力を発揮し、リニア中央新幹線の開発から製造、保守までを自社が担う意思を明確に打ち出した投資となる。松本正之社長が「車両開発を本格的に推進するための技術力強化」と強調するように、JR東海が単独で負担する超電導リニアの事業費5兆1000億円の一部ともとらえられる。 JR東海は山梨県都留市と大月市を結ぶ山梨実験線18・4キロで、1997年からリニアの5両編成での走行実験を続けている。実験線の延長工事を5月から進めており、延長後は実験車両を12両編成にする計画。 技術的には確立されたリニアとはいえ、実用化をにらんだ車両開発には長期間を要するのは必至で、子会社化した日本車両はその核となる。 日本車両はJR東海が昨夏から運用を始めた新型新幹線車両「N700系」の開発パートナーで、高い技術力を誇る。「110年の歴史を持つ国内有数メーカー」(松本社長)で、JR側の信頼もゆるぎない。 JR東海は以前から、社長を日本車両に送り込むなど経営面でも関係は深いが、子会社化を機に、技術本部長をトップに両社でプロジェクトチームも発足させる。リニア実現に向け、リニア事業体としての企業像づくりを進めることになる。 ◆日本車両、JR傘下で生き残り 「われわれ車両メーカーは設計と製造だけだが、提携により開発や保守でも交流ができるようになる」。15日の会見後、日本車両製造の生島勝之社長は、提携のメリットに相乗効果を挙げた。ただ、JR東海の子会社となる背景には、リニアプロジェクトで重要な要素となる車両の製造などで、必要な資金調達を円滑に進めるといった経営面での戦略もみてとれる。 同社の2008年3月期連結決算は経常損失が18億円、純損失は54億円に上り、経常損益は37年ぶりの赤字化だった。 JR東海、西日本の新型新幹線車両「N700系」を一挙に3年分受注したため、部品や製造施設などの初期費用がかさんだことが原因だった。 日本車両は私鉄や国外電鉄の車両製造も手掛けるが、JRへの依存度が高い。 このため、JRの大きなプロジェクトに参画すれば会社を挙げての事業となり費用も膨らむ。 JR東海の松本正之社長は「(赤字となった)業績は一時的なもの。今回の提携とは直接かかわりはない」と述べ、提携と日本車両の“救済”とのかかわりを否定。だが、日本車両を子会社化する理由について明確な答えはなかった。 JR東海が、リニア事業を車両製造まで含め完全に“手綱”を握って進める意向なのは確か。日本車両としては独立色を薄めてもJR東海傘下で事業への参画度を深め、必要な巨額投資でも調達を有利に進める狙いがあるとみられる。 リニア車両の受注は、頭打ちとなった国内需要に苦しむ鉄道車両業界での生き残りにもつながる。 日本車両は上場を維持することで、名古屋鉄道や小田急電鉄など私鉄への車両提供も円滑に進める方針。生島社長は「メーカーと鉄道事業者の総合的な技術によって、より品質の高い車両を生み出せる。提携はプラスに働く」と強調した。 (細井卓也) 【日本車両製造】 1896(明治29)年に名古屋市で設立。愛知県豊川市など同県内に3カ所の工場を持つ。JR東海、西日本の新型新幹線車両「N700系」をはじめ、名古屋鉄道や名古屋市交通局など民営、公営の鉄道事業者向けに鉄道車両を製造。2008年3月期連結決算は売上高919億円、経常損益は18億円の赤字。 (中日新聞)
|