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2008年8月18日

◎地方税の徴収 強めたい県市町の一体感

 石川、富山県の二〇〇七度県税収入決算がまとまった。国からの税源移譲に伴って、両 県とも個人県民税の滞納額の増加が目立っており、地方自治体の徴税力強化の必要性があらためて示された格好である。

 個人県民税は市町村が個人市町村民税と一緒に徴収している。このため県側は、税務の 専任職員を市町村に派遣して徴収業務を支援したり、大口の滞納案件に対しては県が直接徴収に乗り出すなどしているが、そうした県と市町村の一体的な取り組みを一段と強める必要がある。

 〇七年度決算では、石川県の個人県民税の収入率は94・9%で前年度(93・1%) を上回ったものの、新規発生の滞納額は前年度より三億四千四百万円増の九億円に上り、繰越額と合わせた滞納額は十九億四千万円に積み上がっている。富山県の滞納額は十六億二千万円で、前年度より44%も増え、収入率は一九七九年度から維持してきた98%台を割り込み、97・8%に低下した。

 両県とも税源移譲で個人県民税がこれまでの約一・八倍に増えたことを理由に挙げてい るが、こうした事情は市町村も同様である。地方税の賦課・徴収は各自治体固有の業務ながら、県と市町村が協力し合って税収を確保し、住民間の税の公平性を保つことは分権時代の要請と言ってもよい。

 徴収業務の連携、協力を一歩進めた形として近年、財産調査や差し押さえなどの滞納整 理を県と市町村が一体で行う組織を設置するところが相次いでいる。また、滞納整理だけでなく、地方税の事務全体を共同で行うことをめざす動きも出ている。県としても、こうした共同化の動きを念頭に入れておく必要はあろう。

 滞納整理などは専門的な知識やノウハウが要る。しかし、市町村では税務担当の職員が 限られている上、定期的な人事異動のために専門職員が育ちにくく、滞納整理などのノウハウの継承・蓄積が不十分なことなどが課題になっている。こうした市町村の悩みにこたえ、職員の能力向上に指導力を発揮することも県の役割の一つと心得てもらいたい。

◎橋のデータベース化 利用価値の高いものに

 石川県で、市や町が管理する橋のうち長さ十五メートル以上の九百五十橋を産学官が協 力してデータベース化し、一元的に管理するシステム開発が行われることになった。市町村レベルでは先頭を切るものである。それだけに、工夫して利用価値の高い、模範的なものにしてもらいたい。

 橋の寿命はおよそ五十年といわれる。多くの橋は高度成長期に建設されたもので今後、 一斉に老朽化を迎える。が、財政事情から同時に架け替えることは不可能だ。データベース化で管理し、寿命を延ばす工事を施しながら順繰りに架け替えていくシステムにするのが狙いだ。全市町の利用を目的に、来年度から利用できるようにし、財団法人の「いしかわまちづくり技術センター」で運用する。

 富山県の全十五市町村ではまだデータベース化の話が出ていない。富山市と小矢部市が 今年度に長寿命化を前提にした点検を進めている段階であり、県は今月下旬に市町村の担当者を対象に研修会を開き、長寿命化修繕計画の策定を指導する段取りである。

 石川県のデータベースにはとりあえず工法、長さ、幅、周囲の環境などの条件を入力す るが、データベースに頼り切るのではなく、橋の老朽化を判断する方法として現場をパトロールし、目視で問題点を発見することを基本に据えている。その結果をデータベースに追加していくわけだ。

 橋の老朽化は先進国共通の悩みであり、日本より三十年早く一九二〇―三〇年代に急速 に道路整備が進んだ米国では六〇年代から老朽化した橋の崩落事故が起きるようになった。昨年八月には中西部ミネソタ州ミネアポリスのミシシッピ川に架かる高速道路橋が突然崩落、約五十台の車が橋とともに川に転落した大事故が発生した。

 実はこの大事故を機に、日本の政府も国が管理する橋はもちろん、都道府県や市町村が 管理する橋の安全や長寿命化を図ることになったのである。政府は昨年度、長寿命化に向けた補助制度を発足させたが、財政力の弱い市町村の取り組みが全国的に遅れているのが問題だ。


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