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2008年8月18日

 日本の日用品や料理などを芸術品だと外国人が感嘆するのをたまに聞く。職人らが本能的に美意識をもっているからだともいう

米国の女性教育者アリス・ベーコンは明治時代の日本について「貧しい人の食卓でさえも最高級の優美さと繊細さがある」とその審美眼を称賛している(久野明子訳「華族女学校教師の見た明治日本の内側」中央公論社)

美を求めるDNAは五輪選手にも受け継がれている。例えば、ポイント制導入などで柔道着を着たレスリングとまで揶揄(やゆ)される柔道。日本選手の一本勝ちには胸がすく。小細工せずスカッと技を決める。これこそ柔道の美なんだと

競技も中盤入り。華麗で壮大な開会式が「花火の合成映像」や「口パクの少女の歌」などによる偽装だったことが発覚した。“ボランティア”応援団が多数競技場に送り込まれ空席を埋めているとの外電もある。まるで豪勢な舞台衣装がめくれ、中からやせ細った威信が姿を現したように見える

「超大国」の美意識が偽装ではしゃれにならない。胸がすくどころかモヤモヤが深まる。せめて平和の祭典ぐらい素顔を見たい。


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