2008-08-17 昨日とうって変わって
今日は涼しくて、朝ずいぶん寝てました。
コミケは昨日サークルをたずねてくれた人と、高校の時の先輩のサークルに、さらに二箇所ほどのために午後からでした。
今回は、カタログを事前に見られなかったためか、どうも期待する気分が盛り上がらず、昨日の暑さもあって、いくつもサークルをチェックして回る気力が湧きませんでした。それでもゲーム電源不要は一通り見て回りましたけど。
■この文章はスルーで。
ついカッとなって、つらつら書いたお話。やっぱり異世界召喚モノは、もどってこないとねぇ。
勝手文章で、なんの作品のシーンというのも書きません。言葉は意図的に選択していますし。なのでなんの文章かわからない人は気になさらず。わかる方も、このブログは「聞き流せ」ということで。ツッコミされてもスルーしますのでご了承ください。
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自分の部屋のドアを開けて、踏み出した一歩に、なぜか転落の恐怖を感じて、少年は硬直した。
『なんだ?高度を維持して……、いや、機体が持つように歌を……なんのだった?歌が聞こえない。歌?誰の?何の?』
夢を見ていた眠りが覚めた直後のように、まるで乾いた砂が手のひらから流れ落ちるように、あるはずの記憶が抜け落ちていく。
『なんで体が10代に戻っている!?いや、いつの間に学校にいく服装になんて……学校?そんな服はもうないはず……。いやだめだ、状況に呑まれては……』
だが、その思考の意味を汲み取るだけの理解力さえも失われていく。まるで入りきらないコップに余計に水を流し込んでいるように、頭からなにかが溢れていく感覚。あわてて学習机に駆け寄り、放り出してあった学校のカバンからノート引っ張り出し、シャーペンを取り出し芯を出すのも惜しんで、思い浮かぶものを書き始める。だが、自分でも驚いたことに文字は日本語ではなかった。
『だめだ。この文字で書いても後でわからなくなる。』
途中から文字はカタカナだけの殴り書きになった。漢字も思い出せないのだ。ひらがなで書こうとすると、漢字を思い出そうとしてしまい手が止まる。その一瞬の停止でも、記憶が欠けて、破片が蒸発してしまう気分に焦る。
人の名前に性別、知っている範囲での年齢、立場と自分との関係と、思いだせる限りを、とにかく書く。その一方で、ここにいる自分の記憶が邪魔をする。
『幼馴染の女の子に告白して、YesでもNoでもなくて、わかんなくて……。気晴らしになんないかと帰りにエロ本買って、いまは食事に母親に呼ばれて、ベッドの上のは隠さないと……。』
ノートにはいまや突拍子もないことが書き付けられ、いまの自分の常識が『そんなアニメみたいなことあるわけない』と否定しようとする。それでも、眠さに耐えて試験勉強をしているときのように、自分に負けないよう、汗をかくくらい精一杯の精神的努力を払って書き続ける。
街の名前。自国と他国の生産物や貿易。その差益と損。政治的な計略と結果。歌い手の育成と術の活用。男たちへの残留物の影響。軍の編成と配置。兵器の開発と配備状況。各国の思惑と指導者たち。局地的に起きた見逃せない事件のいくつか。何年かぶりに召喚された者と同行した者たち。彼を狙う仮面の男の正体と部隊構成と機体と、評議会と議長の思惑と……。
『だめだ。何年もの間のことを全部なんて、書ききれやしないっ!』
喪失感が胸の中に満ちるような感覚が広がり、それが押し出したかのように、知らず涙があふれ出し、目から雫が落ちてノートがぬれた。
『わすれてしまう。わすれちゃう。だめだ、いやだ――。』
涙でにじんだ視界に、青空を背景に自分の顔をのぞき込んだ幼い王女の顔が浮かぶ。自分のために歌ってくれる彼女が成長して美しい女性となり、彼女の姉に負けず劣らぬ美貌と風格を備えていく。彼女の歌を背に困難な戦いを勝ち抜き、いくつもの難題に挑戦したことを、まだ思いだせる。彼を慕ってくれる彼女の周囲には、その姉と、軍の副官や部下たち、政治の執行者たち、他国の友人知人、生死の別なく戦友たち、そして同じように召喚された幼馴染の――。
彼は、別の激しい衝動にとらわれてシャーペンを放り出し、デスクに背を向けて部屋を駆け出した。そのままの勢いで階段を駆け降り、玄関で靴を突っかける。その靴は、彼にとってははるかな過去であるはずなのに、“その日帰宅したとき”と同じ状態でそこにあった。
「ちょっと出てくる!」
その言葉は、階段を降りて玄関を出るまでの一続きの動作の一部として、習慣で口から出た。それが今の自分に残っていることに驚いたが、その瞬間には黒い合成皮革の靴のつま先を床に打ち付け、かかとを無理やり靴に納めつつ、外から玄関のドアを力いっぱい閉めていた。
戦いにも耐えられるよう鍛えた大人の身体はどこかへいってしまい、若々しさだけに満たされている細い体と、理解力の代わりに衝動があふれた頭が今の己だった。そんなティーン・エイジャーの身体で全力疾走する。髪をなびかせて走る、幼馴染のランナー姿が脳裏に浮かぶ。
帰宅から、階下の母親に夕食だといわれるまでの短い時間、いや、自室のドアを開けた一瞬に、自分がどこに行き、どれだけの時間が過ぎ、どれだけの経験をしてきたのか、もうはっきりとは思い出せない。いま「それは夢だ」と誰かに断じられたら、言い返すことはできないくらいに、異世界についての記憶は、あいまいなカケラに分解されてしまっていた。
だが、彼女に会えば、顔を見れば、解決すると思った。もう具体的に説明できなくても、彼女の意志を妨げないよう2人のあいだの距離を不用意に変えることなく、彼女を探し、守れるように敵に立ちはだかり、作戦を立てて先陣に立ち、戦いの後でも一人の武人として生きてきたはずだ。彼女が無事でいるなら、自分の中で忘却の彼方に滑り落ちつつある異世界の、そのすべてが夢や幻であってもかまいはしない。
だから彼女に会いたい。告白への答えがどうであろうと、彼女への気持ちはかわりはしない。いまや、幼馴染でいるのが当たり前だからでなく、先輩のアプローチに嫉妬しているからでもなく、いてほしいからこそ、かたわらにいてほしい。彼より少し低い背丈で、学校の制服に特別大きなリボンを胸に結び、長い髪も同じ赤いリボンで結んだ勝気な女の子。
その姿を求めて、彼は戻ってきた自分の世界を駆けていく。沈みかけた夕日の明かりが赤から暗い紫に変わりつつある向こうに、影を見つけたとき彼は異世界での人生の実感をすべて取り戻すと同時に、この世界における人生の未来を手にいれた気がした。
彼が相手の名前を呼んだ声は、叫ぶように発せられた彼自身の名を呼ぶ声と重なったが、そんなことはもうお互いに些細なことだった。
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■[読了ログ]機動戦士ガンダムUC (5) ラプラスの亡霊 (角川コミックス・エース (KCA189-6))
主人公が、バナージ、オードリ・バーン、リディの3人だとわかる一冊。それでも他のキャラクターにみ見所が作られているのは、作者の力量のなせる技かと。
アニメに関係するタイトルだけど、ラノベではなく、多くの登場人物と、それぞれの経歴、考え、主義主張、想いに、宇宙世紀という世界のありようが影響して、読み応えのあるシリーズになっています。これで文庫刊行だったらー。
機動戦士ガンダムUC (5) ラプラスの亡霊 (角川コミックス・エース (KCA189-6))
- 作者: 福井晴敏, 矢立肇, 富野由悠季
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/07/26
- メディア: コミック
2008-08-16 お祭り
■[Event]コミケ74
ありがたくサークル参加してきました。持っていったものの半分はお買い上げいただけたし、なによりなかなか顔を合わせられない皆さんと会えるオフカイ的な面で、楽しく1日過ごせました。浴衣もダンディだとほめてもらえたし(嬉
夕方から別所の花火大会を見る約束もあったので、上に書いたように、浴衣に江戸結びで行きました。洋服よりは涼しく過ごしたのは間違いないけど、それでも朝に駐車場に降り立った次点で、もう「暑さがヤバイ1日だ」と思われて、実際そうでした。
扇子を止めると、すぐに汗がにじむくらい中も暑く、エリアの関係で西館はパス。この判断が正解で、たずねてくれた友人が言うに、西館と東館の間の交通が非常に停滞していて、空気も悪く、倒れている人もいたらしいとのこと。行き来は外を回った方が早かったそうな。
お尋ねいただいたみなさん、ご挨拶できたみなさん、今日は会えてよかったです。あんな大変なところへ、お疲れさまでした。ありがとう。
2008-08-14 男女のKY違い
■[読了ログ][Novel]豹頭王の苦悩 (ハヤカワ文庫 JA ク 1-122 グイン・サーガ 122)
グインの想いが終わる回?
シルヴィアの行動の結果は、ついにグインを追い詰め、その想いゆえにグインは決心してしまう。庇護を求めて行った無茶が、庇護を与えてくれる人を遠ざけてしまう無残。今巻ラストのシルヴィアは、哀れにつきる。アムネリスともども、不幸になるべく作者に選ばれてしまったというところか*1。
ところで、最近の展開の中で、このシルヴィアとの関係の結末もそうだけど、グインが取り戻せない事態が多発している気がする。そもそもグインは超人的で、この世界の人々はそこに魅かれたり、事件となったりするが、グインの判断と行動で解決されてきた。だが、いくつかグイン自身が関わっているのに、取り返しが付かないことがいくつか発生していて、最近多い。
古い事件では、辺境編でモンゴール軍を罠にはめて焼き討ちした際に、イシュトに任せたこと。このとき倒した武将のことが、後に血塗られたゴーラ建国の流れのなかで、イシュトに刺さったとげになった。
同様に、グインが意識してそうしたのではなかったり、不可抗力であったりするが、重要な事態に陥っていることがある。そのひとつが、記憶を失っていたときに夢の中でシルヴィアを切ったことで、今回の結末を引き起こすが、グイン自身はまったく覚えがない状態だ。また、シルヴィアがおろかであることも影響しているが、放逐された者についてもグインは知らない。それもいわくありげに描かれているのに*2。
また、記憶に関係してだが、やはり一人の人物を忘れてしまい、親とともに旅立たせてしまったのも、こちらは目的地のことも考えると、大きな伏線を感じさせる。
次巻以降も楽しみで、作者には健康を取り戻して、グインのサーガだけは少なくとも最後まで語ってほしい。