キャリア塾

キャリアインタビュー:村田早耶香氏

2008年5月14日

キャリアインタビュー:村田早耶香氏(3)

ところで、「かものはしプロジェクト」の今後の展開についてはどのように考えているんですか?

特定非営利活動法人かものはしプロジェクト共同代表 村田早耶香氏
特定非営利活動法人かものはしプロジェクト
共同代表 村田早耶香氏

当プロジェクトは10年をめどに一度区切りをつける予定です。コミュニティファクトリー事業による雇用創出を展開していく道筋をつけて、現在の運営体制についてはいったんゼロベースに戻すということです。仲間をこのプロジェクトに縛りつけたままにしておきたくないという気持ちがあって、まずは一度解散し、続けたい人は続ければいいし、別の道に進みたいならそうしてくれればいいということですね。私自身は子ども達のための活動を続けていくと思います。まだ10年以上先のことは確約できないですけれども。

村田さん自身のライフ&キャリアプランはどんなものですか?

私は、60歳でリタイヤするまでに10年単位で4つの国の児童買春問題の解決に取り組みたいと思っています。「かものはしプロジェクト」は、2011年で10年目を迎え、私も30歳です。その時点で、カンボジアの事業はだれかに運営を譲り、私は新たにベトナムかミャンマーでのプロジェクト立ち上げを考えています。まだあくまで構想段階ですが。

対象とする国を移っても、やはり村田さんが全うしようとする使命は、「児童買春問題の解決」になるのでしょうか?

そうですね。ただ、私の根本にある目標は、「未来を選べない子供たちが未来に希望を持って生きられるようにする」ということですので、児童買春にテーマを限定するのではなく、児童労働に関する別のテーマに取り組む可能性もあります。結果的に児童買春問題とも繋がってくるかと思いますが。

ちょっと話を戻します。村田さんは20歳そこらで、NPOの代表者のjひとりとして仲間を率いる立場になったわけですが、当プロジェクトのマネジメントを通じてどのようなことを得たり、学びましたか?

一言で言えば、「人間性」が鍛えられていますね。代表者は、自ら考えてことを起こし、人が足りなければ何から何までこなさければなりません。また、代表という役職の権威だけで周囲の人たちを巻き込むことはできません。人間性が低ければ、だれもついてこないわけです。ですから、いろんなトラブルやプレッシャーに負けることなく、強い信念を持って前向きにことを進めることの重要性を実感しています。逆境を乗り越え、起業家で成功した人を見ると、厳しい状況に何度も直面する中で、物事をポジティブに考えるようになっていくようです。私も立ち上げ当初の苦労でずいぶん人間性をきたえる機会を頂きました。

リーダーに求められる人間性にもいろんな要素があると思いますが、特に重視されているのはなんでしょうか?

特定非営利活動法人かものはしプロジェクト共同代表 村田早耶香氏

それは、本当の意味での「謙虚さ」だと思っています。日経Woman主催の“Woman of the Year 2006”に選出された時に、成功している女性経営者の方々にお会いしたのですが、皆さんとても謙虚だったのです。事業を成功させたという自信があるから、へんに威張る必要がないということに気づきました。こうした優れた経営者には、にじみでる人間性があるのです。また、「人を大切にする」ことが優れたリーダーに共通している点だと思います。私自身はまだまだですが、謙虚さや人を大切にするということを心がけたいと思っています。

なるほど!他にNPOの代表としての仕事を通じて得たものはありますか?

そうですね・・・スタッフが生き生きと働くと全体がよくなることに気づいたり、最初は自分の成長が一番重要だったのですが、むしろ自分よりもスタッフが成長できることのほうが重要だということもわかってきましたね。

また、「自分を幸せにできる力」というものも必要だと思います。トラブルなどに巻き込まれると、やる気が低下したり、気持ちがネガティブに傾きがちです。そうすると、目先のことにとらわれ、長期的な見方ができなくなったり、卑屈になって、他人に当たってしまったりします。そこで、自分の気分をうまくコントロールできるコツを知っておくということです。私の場合、それはちゃんと寝ること、気分転換すること、そして初心に帰ることです。初心に帰るということについては、カンボジアにいつでも行けるように旅費を貯めておくといったことをしています。

村田さんは、これからもこうしたNPOの仕事を続けていって後悔はないと思いますか?

はい、後悔することはありません。自分がやりたいことがやれているからです。実は、「かものはしプロジェクト」立ち上げ当初の3年間は本当に厳しくて、つらい記憶しかありません。自分のお給料が月収6万円弱しかもらえない時期がありました。良い会社に就職し、相応の給料をもらっている友人たちと大きな差がついてしまったのです。また、私がまず仲間たちより先に卒業してプロジェクトに専念し始めた頃は、朝事務所を開けるのは私でした。私が行かないと仕事が始まらないわけです。学生の仲間は日中学校に言ってしまうため、事務所には私1人しかいません。学生の仲間たちも結局は就職してしまって自分1人になってしまうのかなと考え、大きな孤独感を味わい、この先やっていけるのかとても不安を感じていました。でも、高い「志」と強い信念を持つ青木と本木が、卒業後も一緒にがんばってくれたおかげで乗り切ることができました。本木からは、「今はつらいけど、そのうちきっと良くなるから」と励まされていたのですが、本当にそうなりました。

ありがとうございました。「かものはしプロジェクト」の益々の発展と、村田さんのさらなるご活躍をお祈りしております。

(聞き手:松尾順)